研究課題/領域番号 |
23700848
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
木村 哲也 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (60533528)
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キーワード | 健康科学 / 神経生理学 / 生体工学 / 加齢 / 転倒予防 |
研究概要 |
本研究の目的は、これまで見過ごされてきた体性感覚情報(触覚・固有感覚)の歩行バランスに対する効果及びそのフィードバック制御則を明らかにし、その上で神経生理学的観点に着目した新たなバランス補助器具を考案することである。 まず基礎的知見を得るため、健常若年者を対象とし、身体動揺情報を体性感覚から得た場合の歩行バランスの変調を明らかにする実験を昨年度行った。具体的には、通路に長さ16mの手すりを被験者の腰の高さに設置した。被験者は、上肢の示指腹側で手すりに軽く触れながら(ライトタッチ)歩行を行った。本年度に詳細なデータ解析を行った結果、指先タッチ力の鉛直方向の平均値は約1Nであった一方で、ライトタッチにより、歩行時の腰部加速度の左右方向成分が有意に減少した。このことから、体性感覚情報の歩行バランス向上への応用の可能性が示唆された。さらにこの知見を応用に向けて発展させるための検証を本年度は行った。まず、歩行における視覚情報とライトタッチからの体性感覚情報の貢献を比較検討した。その結果、閉眼時においてもライトタッチからの体性感覚情報を得ることで、腰部加速度の左右方向成分が有意に減少することが明らかとなり、ライトタッチによる体性感覚情報が視覚情報のバランス調節機構への貢献を補うことが示唆された。 以上の結果は、手指先体性感覚の歩行バランス制御機構に対する新たな貢献を示唆するものであり、今後の応用研究に対して重要な示唆を与えるものである。 本年度はさらに、若年者と高齢者の一致点及び相違点を明らかにすることを目的とし、高齢者に対しても同様の測定を行った。本実験を終え、現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者に対する実験において、より安全に正確なデータを取得するために、実験環境の変更(歩行路の長さ、使用するセンサの変更)を行ったが、交付申請書に記載した「研究の目的」に合致した実験を順調に進めることができている。 また、当初の計画通り、各分野(神経生理学、バイオメカニクス、生体医工学)の研究協力者の助言を効果的に仰ぎ、研究を遂行することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目までの基礎的検討を踏まえた応用研究を行う。具体的には、人工的に体性感覚の感度を高めた場合の歩行バランスへの効果を検証する。そして、神経生理学的観点に基づいた補助器具を確立する。また、これまでの研究成果を学会・論文にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までの研究で、次年度の測定環境は整っている。次年度は新たに体性感覚の感度を高める装置開発を行う。従って、次年度の研究費の使用計画は、装置の作成費、電極などの消耗品等が主である。さらに論文発表、研究発表のための資料費、旅費等が必要である。また平成24年度に予定していた研究発表を1件取りやめたため、同じ目的で次年度で旅費を使用したい。
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