研究課題/領域番号 |
23700850
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (30508958)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ChREBP / 転写因子 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 糖代謝 |
研究概要 |
解糖系、脂質合成系の調節酵素群の遺伝子発現を促進する転写因子がCarbohydrate Response Element binding protein (ChREBP)である。従来より、本転写因子の活性化機構はグルコース濃度に応じたリン酸化・脱リン酸化により制御されていると考えられている。しかし、リン酸化・脱リン酸化のみでは活性化機構の説明がつかない部分が存在し、新たに14-3-3タンパクの結合が活性化に寄与していることを申請者らは見出した。これとは別に、ChREBPのC末端側にMlxが結合し、ターゲットとなる遺伝子にヘテロダイマーとして結合することが知られている。今回、このMlxの発現量、および結合力によりChREBPの細胞内局在が変化するのかをHEK293T細胞を用いて詳細に検討を行った。その結果、Mlxの発現量が細胞内局在に大きく影響を及ぼし、Mlxの結合が強ければ強いほど転写活性が強いことが判明した。 さらに翻訳後修飾の一つであるO-GlcNAcの付加も活性化に影響を及ぼすことも発見し、報告した。 最近の知見としては、ChREBPはグルコース濃度のみに応答し核内へと移行すると考えられているが、我々は本研究課題において新たな活性化因子を発見した。当研究室では活性酸素の除去機構のひとつであるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の遺伝子欠損マウス(KOマウス)を保有している。現在、SOD KOマウスを使用し新たな活性化因子によるChREBPの細胞内局在を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子は、核への移行によりそのターゲットとなる遺伝子の発現を制御している。本ChREBPも例外なくこのモデルに当てはまり、グルコース濃度に応答し核へと移行する。従って、活性化機構の解明には、転写因子の局在を観察することが必須である。実験方法としては、核と細胞質との画分を調製し、電気泳動ののちウエスタンブロットの手法を用いて、どの画分に転写因子が局在しているのかを確認するのが常法である。この際、抗体の質が実験の成功のカギとなる。従来より使用していた抗体では、少量を転写因子を検出できない等の問題があった。 そこで、新たに抗体を作製しているため、少し進行具合が遅くなっている。しかし、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
グルコース以外にも応答する活性化因子が見つかった為、申請書に書いているようにその新規活性化機構の解明を引き続き行う予定である。具体的には、SOD KOマウスを使用しその糖代謝や脂質代謝を解析することで、酸化ストレス状態におけるChREBPの役割を検討する。そうすることで、ChREBPの新規活性化因子による転写活性の機構を解明できると思われる。 また、先に報告したO-GlcNAcの付加部位を特定するとともにその詳細な構造を解析する。O-GlcNAcの付加により、ChREBPの細胞内局在が変化することは判明しているので、より具体的な核移行のメカニズムを解明する予定である。 以上のように、既存のグルコース濃度に応答した活性化メカニズムの解析と並行して、新規活性化因子による活性化メカニズムを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書に記載された通り、主には抗体作製費、細胞培養器具(デッシュ、ピペットなど)、細胞培養用試薬(血清、培地など)、生化学実験試薬、各種代謝産物の測定キット(中性脂肪測定キット、グリコーゲン測定キットなど)、遺伝子実験用試薬(制限酵素、PCR用試薬など)に使用する予定である。 その他消耗品、マイクロチューブ、遠沈管(15mlや50mlなど)、測定用マイクロプレート、チップ等の消耗品にも使用する予定である。
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