近年,携帯音楽プレーヤーの小型化・大容量化・低価格化などの技術革新が進み,イヤホンやヘッドホンにより音楽を屋外で聞くというライフスタイルが,特に若年層で形成されている.これに伴い,屋外の騒音環境下で,大音量で音楽を聴くことによる内耳障害が懸念されている.近年では,携帯音楽デバイスのファッション性や音質が高まったことで,若年層以外にも広い年齢層でユーザー数が増加し,それに伴い携帯音楽デバイスの使用に関連した難聴が発生する懸念が高まっている.米国でも,携帯音楽プレーヤーが難聴を招く懸念について,議会が国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)に調査を要求するなど,大きな問題となっている。 本研究では様々な質,レベル,持続時間の騒音下に於いて,携帯音楽プレーヤーで音楽を聴く場合の外耳道音圧を計測し,静寂な環境下で音楽を聴く場合に対して,騒音環境下ではどれほど難聴の危険性が高まるのかを,定量的に明らかにすることを目的とした。 これまでの研究では、電気通信大学小池研究室の協力のもと、騒音室に電車内の騒音を再現した場合の大学生7名の外耳道内音圧を計測し、静かな環境では外耳道音圧は最大でも85 dB程度であったが,車内環境に合わせて各被験者に適当に音量を調節してもらった結果,外耳道音圧が90~100 dBに達する被験者が存在した.これは,難聴の危険性を強く示唆する結果である.この様に一定の環境下で計測を行うことができ,個人差,音楽再生装置の差,騒音・音楽ソースの差などを,客観的に評価し,正確な統計学的データを取得可能となると考えられる. 更に実験動物(マウス)においても同様の騒音暴露実験を行うため、本講座防音施設内においてマウス用騒音暴露実験装置を開発した。今後は同装置を用い上記の外耳道音圧測定を行うことにより内耳への影響を解析する予定である。
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