研究課題/領域番号 |
23700866
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
立松 麻衣子 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (60389244)
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キーワード | 高齢者生活 / 地域 / 介護事業所 / 要介護高齢者 |
研究概要 |
高齢者のその人らしい生活を実現するためには、高齢者と地域の双方向の関係性が必要である。さらに、それを持続的な関係にするためには、高齢者に対して「身体ケア」と「関係性を支えるケア」を含めた、「生活を支えるケア」を提供する必要があると考えている。本研究では、介護事業所と地域がそれぞれに役割を担うことによって、高齢者の暮らしをつなぐ「生活を支えるケア」を提供することができると仮定し、次の3つの検証を行う。すなわち、①介護事業所に不足する「多世代が行き来する」機能を地域が補完する、②地域に不足する「生活や人のつながりを支える」機能を介護事業所が補完する、③介護事業所と地域が役割を相互補完し、在宅要介護高齢者と地域の関係性をつくる、である。平成23年度は①の取組および検証を行い、平成24年度には②の取組および検証を行った。 地域高齢者の生活調査を実施し、日常生活ニーズを把握した結果、足回りへのニーズや重労働を伴う家事の代行があり、地域高齢者の日常生活困難が明らかになった。また、気楽に参加できる旅行や催事、人と会える機会へのニーズもあり、外出機会や人とのつながりを創出することの意義も明らかになった。 そこで、地域高齢者の日常生活困難を、行政や福祉組織、NPO、住民が支えている事例の実態把握調査を行った。この調査は介護事業所が支える取組ではないが、地域高齢者の孤立死を防止することや人との関わりを維持することは、共助が有効であることがわかった。 また、外出機会や人とのつながりを創出するために、介護事業所を会場にしたサロンを開催した。サロンでは、行政や企業の協力を得て講座を開催することもあった。 「地域に不足する生活や人のつながりを支える機能を介護事業所が補完する」取組は、介護事業所が地域高齢者の日常生活を支えることや、地域高齢者と地域の関係性を維持することにつながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、介護事業所と地域がそれぞれに役割を担うことで、高齢者の暮らしをつなぐ「生活を支えるケア」を提供できると仮定し3つの検証を行う。すなわち、①介護事業所に不足する「多世代が行き来する」機能を地域が補完する、②地域に不足する「生活や人のつながりを支える」機能を介護事業所が補完する、③介護事業所と地域が役割を補完し、在宅要介護高齢者と地域の関係性をつくる、である。平成23年度は①の検証を行った。平成24年度は、平成23年度の取組を継続しつつ、②の検証を行った。 平成24年度は、A)地域高齢者の日常生活困難の解決につながる取組、B)外出機会や人と会う機会を創出する取組、の必要性を把握した上で進めた。A)地域高齢者の日常生活困難の解決につながる取組は、地域組織が地域高齢者の日常生活を支えることの可能性と有効性がわかった。介護事業所が実施主体となって地域高齢者の生活を支えることができるかどうかの検証は平成25年度への継続課題とする。B)外出機会や人と会う機会を創出する取組は、参加者から好評価を得ているが、平成25年度も継続して実施しその効果をさらに検証する。 さらに、平成24年度は平成25年度につながる知見を得ることができた。まず、地域力が高齢者と地域の関係性づくりにつながるのではないか、つまり、高齢者の地域居住を継続させるためには地域力が必要なのではないか、という視点である。さらに、平成24年度には、施設高齢者を一時帰宅させることを試行した結果、地域にはそれを受け入れる力があることがわかった。何らかの働きかけがあれば、潜在的な地域力は呼び起こされるのではないか、という視点である。これらは、平成25年度の検証課題「介護事業所と地域が役割を補完し、在宅要介護高齢者と地域の関係性をつくる」ことにつながる知見である。 以上から「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度および平成24年度の研究を遂行するなかで、重度化する在宅要介護高齢者、および長期化・高齢化する家族介護者が地域居住を続けるためには、医療福祉連携、地域包括ケア等のあり方も視野に入れた地域づくりの視点が必要であることがわかってきた。 また、地域の地域力は、何らかの働きかけによって呼び起こすことができることもわかってきた。既存または潜在的な地域力を活用しながら地域づくりをしていくことが、実行可能な方策だろうと考えるようになった。 平成25年度は、平成23年度および平成24年度の研究から得た知見を念頭におきつつ進めていく。平成24年度からの継続課題とした介護事業所が地域高齢者の生活を支えることの可能性を追究しながら、当初の年度計画である「介護事業所と地域が役割を補完し、在宅要介護高齢者と地域の関係性をつくる」取組も実施・検証する。そして、介護事業所と地域が役割を補完することで成熟する関係性や地域づくりについて追究していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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