研究課題/領域番号 |
23700870
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
長野 和雄 奈良女子大学, 人間文化研究科, 准教授 (90322297)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 複合影響 / 等快適線図 / 等受容線図 |
研究概要 |
これまでの環境の快適規準は、室温なら室温のみ、騒音レベルなら騒音レベルのみで示されてきた。本研究の目的は、このような快適規準を、様々な環境条件が組み合わされている実際の生活環境により適したかたちに改めることである。すなわち、室温・騒音レベル・照度条件の組み合わせから総合的な快適度を表す方法を構築し、新たな快適規準を作成・提案することである。初年度である本年度は照度条件を150lxに統一し、気温8条件(暑熱:26,30,34,38℃、寒冷:14,17,20,23℃)、騒音レベル5条件(46、57,68,79,90LAeq)の組み合わせ条件に青年女性(暑熱23名、寒冷21名)を曝露して、被験者の心理・生理反応を得る被験者実験を実施した。生理的ストレス指標である唾液アミラーゼ活性に対し、熱条件・音条件による変化はほとんど見られなかった。各環境要因によって直接的に生起する感覚(暑さ、寒さ、うるささなど)は、当該環境要素のみの影響を受け、他の環境要素の影響が認められなかったが、熱的快適感・熱的受容感には音条件の影響、聴覚的快適感・聴覚的受容感は熱条件の影響が認められた。総合的快適感・総合的受容感には、熱条件と音条件双方の影響が顕著に見られた。すなわち、環境の快適性は1つの環境要因のみでは説明できず、複数要因の組合せ方によって異なることが確かめられた。この総合的快適感・総合的受容感の申告データに基づき、総合温熱環境指標であるSET*と等価騒音レベルLAeqの組み合わせから等しい総合的快適感・総合的受容感を与えるコンター図、すなわち等快適線図・等受容線図を作成した。これらの線図は、SET*とLAeqの組み合わせ条件を与えれば、その環境の総合的快適感・総合的受容感の度合いを0から100の数値で示すことができ、環境の快適性・受容性を評価・予測するのに有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験場所である人工気候室の改修と時期が重なったため、実験実施スケジュールの調整が難しかった。しかし、被験者数のべ880名に及ぶ大規模な被験者実験であったが、概ね当初の予定通りデータを得ることができ、結果的には順調に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
照度条件を変え、同様の実験を実施する。すなわち、照度条件を5lxに統一し、気温8条件(暑熱:26,30,34,38℃、寒冷:14,17,20,23℃)、騒音レベル5条件(46、57,68,79,90LAeq)の組み合わせ条件に青年女性(暑熱、寒冷各20名以上)を曝露して、被験者の心理・生理反応を得る被験者実験を実施する。各環境要因によって直接的に生起する感覚(暑さ、寒さ、うるささなど)が、150lx時と同様に当該環境要素のみの影響を受け、他の環境要素の影響が認められないのか否か、熱的快適感・熱的受容感には音条件の影響、聴覚的快適感・聴覚的受容感は熱条件の影響が認められるのか否か、総合的快適感・総合的受容感には熱条件と音条件双方の影響が顕著に見られるのか否かを検証する。また、得られた総合的快適感・総合的受容感の申告データに基づき、総合温熱環境指標であるSET*と等価騒音レベルLAeqの組み合わせから等しい総合的快適感・総合的受容感を与えるコンター図、すなわち等快適線図・等受容線図を作成する。さらに、この5lx環境下での線図と150lxの場合とを比較・検討する。なお、生理的ストレス指標である唾液アミラーゼ活性については、本実験の温熱条件・音条件の範囲では影響が認められなかったため、唾液採取チップ分の経費を節減する意味でも測定項目から外すこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
予備実験を含め、被験者謝金に25~6万は最低でも必要と見積もっている。唾液採取チップ分の経費は測定項目から除くことで経費を節減する。今年度の成果発表のための投稿料・掲載料で6万、温湿度センサープローブの更新で18万を予定している。上記で次年度の予算を使い切る。ほかにも、成果発表のための旅費、測器校正費、その他消耗品で15万円程度が見込まれるが、これらは通常校費でまかなう予定である。
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