研究実績の概要 |
最終年度はこれまで導いた3 lx、150 lx、5000 lx条件下における知見の適用範囲を広げるため、中間的な750 lx条件について実験を行った。照度条件間の比較から、3 lx条件では150 lx以上の条件に比べ同じ温度・騒音条件下でも快適感・受容感ともに低いことを明らかにした。 この最終年度を含む4年間で、気温8条件(暑熱:26,30,34,38℃、寒冷:14,17,20,23℃)、騒音レベル5条件(46、57,68,79,90LAeq)、照度4条件(3, 150, 750, 5000 lx)の組み合わせ条件に対する青年女性の快適感、受容感を得る被験者実験を実施した。 照度条件ごとに、総合的快適感・総合的受容感の申告値に基づき、総合温熱環境指標SET*と等価騒音レベルLAeqの組み合わせから等しい総合的快適感・総合的受容感を与えるコンター図、すなわち等快適線図・等受容線図を作成した。これにより、室温・騒音レベル・照度条件の組み合わせから総合的な快適度・受容度を0から100の数値で示すことができる。これまでの環境の快適規準が、室温なら室温のみ、騒音レベルなら騒音レベルのみであったのに対し、室温・騒音レベル・照度の組み合わせで表される点で独創的であり、本研究の最大の知見である。 また、快適度と受容度の差から、快適ではないが受け入れられる環境条件が存在することを明らかにした。従来の環境の快適規準は快適であるか否かを示すのみであったのに対し、このような快適でないが受け入れられる条件すなわち受容規準はこれまでほとんど示されてこなかった。常に快適を目指すばかりでなく、節電・健康志向・設備能力など様々な理由から許容できれば是とする新たな規準になり得ると期待される。
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