研究課題/領域番号 |
23700876
|
研究機関 | (財)労働科学研究所 |
研究代表者 |
落合 信寿 (財)労働科学研究所, 研究部, 研究員 (90386649)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 人間生活環境 / 色彩科学 / 被服学 / 交通安全 |
研究概要 |
蛍光色や再帰性反射材を用いた高視認性安全服は、交通場面における車いす障害者の安全確保に応用できる。故に、欧州のEN規格に適合した車いす障害者向けの高視認性安全服・防護具の開発は重要な意義があると思われるが、そのためには、ユーザである車いす障害者のニーズを的確に捉える必要があるだろう。実用化に際しては、色に対する嗜好性や着用時の気分・感情といった情緒的側面での満足感が得られ、かつ視認性や誘目性等の視覚効果の高い素材を用いた被服の開発が求められる。本研究は、ユーザの嗜好性と高視認性素材が有する視認効果の両面において優れた特性を有する車いす障害者向けの高視認性安全服・防護具の試作開発を行なう事を目的としている。平成23年度は、高視認性安全服・防護具に用いる蛍光染布の候補色を選定するため、PANTONE社製蛍光色見本に収録された蛍光染布21色(黄系統2色、オレンジ系統3色、赤系統3色、ピンク系統4色、紫系統4色、青系統3色、黄緑系統2色)を対象に、14尺度のSD法を用いたカラーイメージの測定を行った。また、順位法を用いて、これら21色の蛍光染布に対する色系統ごとの嗜好度ならびに目立ち感についても調査を行った。カラーイメージ調査より、21色のイメージプロフィールを作成し、因子分析を行った。その結果、第1因子として「活動性」、第2因子として「力量性」、第3因子として「評価性」の3因子が抽出された。また、「目立ち感」の尺度は「力量性」因子に集約された。カラーイメージの相違や嗜好度と目立ち感とのバランスなどを考慮して、被服に用いる蛍光染布の候補として11色(黄系統1色、オレンジ系統1色、赤系統2色、ピンク系統2色、紫系統2色、青系統2色、黄緑系統1色)選定した。今後、この結果に基づき、車いす障害者とその介護者を対象として、蛍光染布の二色配色及び単色に対する嗜好性調査を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、車いす利用の障害者および介護者を対象とした高視認性安全服・防護具のニーズ調査と高視認性安全服・防護具に用いる蛍光色に対する嗜好性調査の両方を実施する予定であったが、調査対象者の確保や研究協力者との連携などが十分でなく、蛍光色に対する嗜好性調査の部分的な実施に留まり、車いす障害者へのニーズ調査が実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
多数の調査対象者を確保するため、全国脊髄損傷者連合会などの障害者団体に調査への協力を打診し、前年度に実施できなかった車いす障害者へのニーズ調査と、蛍光染布の配色に対する嗜好性調査を併せて実施する予定である。先行研究では、高視認性安全服に用いられる蛍光色の単色での使用による目立ち度の高さが問題となったが、これらの蛍光色と他の色を組み合わせた配色効果によって、嗜好性の向上と必要十分な目立ち度の確保の両方を実現できる可能性が示唆される。故に、高視認性安全服に用いる蛍光赤、蛍光オレンジ、蛍光黄との二色配色の配色効果についての検討を中心に進めていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは当初の計画で予定していた調査の進捗が十分でなかったことに起因している。よって、前年度未使用であった研究費は、前年度に実施できなかった車いす障害者へのニーズ調査ならびに蛍光配色の嗜好性調査の実施のために使用する予定である。また、平成24年度の研究費のうち主要な物品購入は、使用色の物理的測定を実施するための光学計測機器(色彩輝度計)を購入するための設備備品費としての使用を予定している。
|