蛍光色と再帰性反射材を用いて視認性を高めた高視認性衣服は、危険作業従事者のユニフォームとして近年国際的に普及が進んでおり、車いす障がい者の交通安全にも応用可能である。しかし、高い視認効果により障がいが強調されることで、着用に対する利用者の心理的抵抗が強くなることが問題視される。故に、車いす障がい者向けの高視認性衣服の色彩設計には、一定の視認効果を維持しながら、配色嗜好を考慮することにより利用者の情緒的満足感を高める工夫が必要である。 本研究では、1.車いす利用者における交通ヒヤリハット経験と高視認性衣服のニーズに関する調査、2.車いす用高視認性衣服に用いる二色配色の嗜好度と目立ち感の評価、3.車いす用高視認性衣服(レインウェア)の試作開発、4.試作品に対するユーザの視覚的評価を実施した。 車いす利用者200名を対象に実施したニーズ調査の結果から、対象者の過半数は車いす利用時の交通事故ないしヒヤリハット経験を有し、かつ事故・ヒヤリハット経験者は非経験者よりも高視認性衣服の利用意思が高い傾向が見受けられた。車いす利用者及び非利用者400名を対象に実施した配色嗜好調査の結果からは、高視認性衣服使用色の黄に対して、ビビッド・ライトトーンの赤・緑・青を組み合わせた配色が、嗜好度、目立ち感共に評価が高いことが明らかになった。 配色嗜好調査の結果を踏まえ、企業(株式会社アトリエロングハウス)との協同により、同社製作の既存品の形状を基に、配色の異なる車いす用高視認性レインウェア3種の試作開発を行った。さらに、試作品と既存品の配色・デザインについて一対比較法を用いた視覚的評価を実施した。
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