研究課題/領域番号 |
23700883
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
筒井 和美 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (50435278)
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キーワード | 米 / 高温障害 / 乳心白米 / 澱粉 / 糊化 / 熱特性 |
研究概要 |
本研究の目的は、近年の地球温暖化にともない高温障害をうけた米を用い、高温障害米および米澱粉の物理化学的特性を調べ、高温障害と米の食味に関する知見を得ることである。 平成24年度は、1)高温障害米の物理化学的特性の解明、2)高温障害米の澱粉抽出の検討、3)抽出澱粉の特性の把握について検討した。 1)高温障害米の物理化学的特性の解明・・・2009および2010年新潟県三条市産コシヒカリを用い、高温による玄米の千粒重低下、遊離糖の増加、飯のテクスチャーの変化、米澱粉の粒径の相違など、高温障害米の物理化学的特性を解明した(Journal of Applied Glycoscience60(1)p.61-67(2013))。 2)高温障害米の澱粉抽出の検討・・・同産コシヒカリを用い米澱粉を抽出し、申請の簡易偏光顕微鏡(オリンパス(株)製システム生物顕微鏡:CX41LF)を用いて、澱粉粒の形状や結晶度について確認した。抽出澱粉は、一般の米澱粉とほぼ同様の特徴を示し、澱粉抽出の方法は妥当であると判断し、今後も引き続き同様の抽出法を継続することとした。 3)抽出澱粉の特性の把握・・・2)より抽出した米澱粉を用い、熱特性(申請のエスアイアイ・インスツルーメント(株)製 超高感度示差走査熱量計:DSC6100)や膨潤度について調べた。その結果、高温障害米の調理過程における糊化特性について把握でき、現在、同様の実験を重ね、高温障害のない完熟米との差異について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、収穫年の異なる新潟県三条市産コシヒカリを用い、高温障害米の物理化学的特性に関する成果をJournal of Applied Glycoscience60(1)p.61-67(2013)にて発表した。現在は、同産こしいぶきを用い、同様に千粒重、粒径の測定などを進め、研究成果の発表準備をしている。 また、同コシヒカリから米澱粉を抽出し、申請の超高感度示差走査熱量計(エスアイアイ・インスツルーメント(株)製:DSC6100)や簡易偏光顕微鏡(オリンパス(株)製システム生物顕微鏡:CX41LF)等を用い澱粉の熱特性、粒径の観察、膨潤度などを調べ、高温障害米の澱粉が完熟米に比べて、特異的な性質を有し、調理過程における澱粉の糊化特性が異なることを把握した。なお、簡易偏光顕微鏡は、研究の進捗状況が望ましく、かつ実験上の都合(SEMに比べ、より安定した澱粉粒の観察が行える)より、24年度に前倒しして申請したものである。 以上より、平成24年度は高温障害米の物理化学的特性をはじめとする多くの知見を得、研究計画に対する達成度は非常に高い。今後は、さらに実験を重ね、解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の研究内容を発展させ、1)高温障害米の物理化学的特性に及ぼす品種の影響、2)高温障害米由来の米澱粉の物理化学的特性の解明、3)本研究の総括について検証する。 1)高温障害米の物理化学的特性に及ぼす品種の影響・・・新潟県三条市産こしいぶきを用い、千粒重、粒径などの物理化学的特性を調べ、同産コシヒカリの特性と比較し、高温耐性に強い品種について検証する。 2)高温障害米由来の米澱粉の物理化学的特性・・・前述の超高感度示差走査熱量計や簡易偏光顕微鏡を用いて、抽出澱粉の熱特性、粒径の形状を調べる他、既存機器で膨潤度の定量、澱粉分散液のレオロジー測定も実施予定である。 3)本研究の総括・・・平成23~25年度(3年間)の研究内容について総括し、高温障害の食味に及ぼす米澱粉の物理化学的特性の影響について明らかにする。さらに、その成果を発表するための準備も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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