本研究の目的は、地球温暖化にともなう高温が米の食味に及ぼす影響を澱粉の物理化学的特性から明らかにすることである。平成25年度(最終年度)は1)高温障害米の物理化学的特性に及ぼす品種の影響、2)高温障害米由来の米澱粉の物理化学的特性の解明について検討し、3)本研究の総括を行った。 1)高温障害米の物理化学的特性に及ぼす品種の影響…2009年及び2010年新潟県三条市産コシヒカリ・同産こしいぶきを用い、玄米の外観形質(千粒重、粒径、心白面積割合)や食味を調べた。心白面積割合とは、高温によって米が白濁した部分を画像解析により2次元的に概算したものである。外観形質により、コシヒカリはこしいぶきに比べ、高温障害を受けやすいことが確認できた。食味検査では、高温障害米(乳心白米)の米飯は、高温障害を受けていない完熟米に比べて好まれなかった。 2)高温障害米由来の米澱粉の物理化学的特性の解明…平成24年度と同様に高温障害米から澱粉を抽出し、簡易偏光顕微鏡観察(申請のオリンパス(株)製システム生物顕微鏡CX41LF)、熱測定(申請のSII(株)製超高感度示差走査熱量計DSC6100)、膨潤度測定を行った。抽出澱粉の粒径は、既報(Journal of Applied Glycoscience60(1)、p.61-67(2013))で述べた玄米中の形状と同様の傾向を示していた。高温障害米澱粉は特異的な糊化特性を有し、完熟米に比べて調理科学的な利点があった。今後は、澱粉の老化について実験を進め、米飯や焼き芋などの澱粉系食品の調理加工上で生じる現象についての考察を深めていく予定である(平成26~28年度科学研究費 基盤研究(C)(26350092))。 3)本研究の総括…本研究は概ね計画通りに遂行できた。高温障害米の食味は、玄米の外観形質や澱粉特性に左右され、また米の品種によって高温障害の程度が異なった。
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