研究課題/領域番号 |
23700884
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
杉山 靖正 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (90347386)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 発酵食品 / 熟成期間 / 微量成分 |
研究概要 |
発酵食品が芳醇な風味を獲得するためには熟成期間を要し、様々な化合物が熟成過程で微量な有効成分へ変化することが必要である。しかし、発酵食品の熟成過程に関してはこれまで詳細に検討されておらず、微量成分の精密な構造解析とその生合成過程の詳細な検討が必須である。そこで本研究では、発酵食品の中でも長い熟成期間が必要な伝統発酵食品である豆味噌に焦点を当て、熟成過程で生産される微量成分の解析を目的に研究を進めた。まず、豆味噌5kgから得られたメタノール抽出物を溶媒分画することにより、酸性画分と中性画分に分画した。次に、酸性画分を2度のシリカゲルカラムクロマトグラフィー、Sephadex LH20カラムクロマトグラフィー、逆相HPLCで精製した後、再度Sephadex LH20カラムクロマトグラフィーに供することにより、1個の化合物を精製した。続いて、得られた化合物のHPLCなどを用いた詳細な分析の結果、本化合物はこれまでに豆味噌から得られた化合物とは異なる化合物であることが推測された。そこで、NMRおよびMSスペクトル解析することにより、その構造を明らかにすることを試みた。高分解能FAB-MSスペクトルより分子式が明らかとなり、1H-、13C-および各種2D-NMRスペクトルを詳細に解析することにより本化合物の構造が明らかになった。その結果から本化合物はfrazinにleucineあるいはisoleucineが結合した2種のfrazin誘導体の混合物であることが示唆された。frazinは醤油、食酢、日本酒等の発酵食品からも単離されている化合物であるが、抗菌活性や抗HIV活性などが報告されている有用化合物である。今後、本研究で得られたfrazin誘導体の詳細な生理活性試験をする必要があるが、現時点までに本化合物が高い抗酸化活性を有することを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は、研究代表者の所属が静岡県立大学食品栄養科学部から鹿児島大学水産学部へと異動したことによるものである。現所属機関では、研究を遂行するための研究設備が大幅に不足しており、特に発酵室や培養機器がないため微生物を取り扱うことが困難であること、高分解能MSスペクトルを測定するのに必要な質量分析計などの大型分析機器を保有していないことなどが挙げられる。これらの機器類は高額であり、本研究資金では購入できないのが実情である。また、数年以内に納入される見込みもない。さらに、所属機関の特性により本テーマをメインに研究活動をすることに理解を得るのが難しい点も原因の一つであると考えている。そこで、今後は設備面の不足を補うためには他研究機関との連携が不可欠であると考え、東京大学、静岡県立大学、九州大学の研究協力者との連携を深め、当初の研究計画を進めていくこととする。さらに、主な研究対象と考えていた豆味噌については研究規模を縮小し、できるだけ微生物を取り扱わない方法を採用することに加え、水産発酵食品である鰹節および魚醤油を主な研究対象にしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究課題の目的や方法などの基本方針については、計画書作成時から変更はない。しかし、計画よりやや遅れており、設備面に問題があるのは明らかであるため、平成23年度の研究進捗状況を踏まえ、次年度以降は主たる対象を変更して研究を行うことが最善と考えている。すなわち、豆味噌に関する研究の規模を縮小する代わりに、主な研究対象を鰹節および魚醤油などの水産発酵食品とすることを計画している。変更に伴う材料の調達や発酵食品の製造に関する手配は既に済んでおり、本課題を推進する上での研究協力者もいることから、すぐに研究を開始できる体制にある。新たに追加する研究対象について、鰹節は枕崎市にある鰹節製造会社から経時的にサンプルの提供を受けることになっている。また、魚醤油は製造会社が限られており、経時的なサンプルの入手と大量のサンプルの入手が困難であるため、醤油麹を用いて自ら調製することを予定している。材料はエビの頭部などの未利用資源を用いることで、入手が容易となるため化合物の単離に関する研究を行うことが可能である。本研究の成果は未利用資源を材料に用いることから、発酵食品からの機能性成分の取得に留まらず、未利用資源の有効利用へ繋がることも期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は、平成23年度の研究が計画よりやや遅れたことから生じており、次年度は他研究機関との連携を深めて研究を推進していくことに加えて、研究対象を水産発酵食品まで拡大するために、全体としては研究の規模を拡大することになる。そのため、次年度に請求する研究費と合わせて使用する予定である。交付額の全てを試薬、ガラス器具等の消耗品の購入に充てる予定であるが、研究代表者が異動したことにより、現所属での基本的な研究資材が不足しているため、本課題を進める最善の方法を考えたうえで研究費を使用する予定である。
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