本研究は,デンプンの老化度のリアルタイム測定法を開発することを目的としている.生デンプンに水を加えて加熱するとα化し,消化されやすいデンプンとなるが,冷えて時間が経過すると固くなり老化する.このデンプンの老化度をリアルタイムで測定できれば,デンプン性食品のシェルフライフの決定に寄与できると考えている.前年度までと同様に試料には,各種デンプン(小麦,トウモロコシ,バレイショ,サツマイモ)及び市販の白玉粉と上新粉を用いた.老化度の程度は,ヨウ素液による比色法及びレジスタントスターチ(難消化性デンプン)量を測定して検討を行った.デンプンは完全に消化される消化性デンプンと消化されにくいレジスタントスターチに大別される.このレジスタントスターチを測定することで,老化度を検討しようと考えているが,レジスタントスターチの測定には時間を要するため,測定結果と近赤外分光法(波長領域1000~1700nm及び5.4~10.8μm)による測定で得られたスペクトルデータを検討し,リアルタイム測定に応用できるデンプンの老化度を示す波長領域の検索を行った.各種デンプンの老化度と近赤外分光法による測定結果を検討した結果,デンプンの老化度の比色法及びレジスタントスターチの測定結果と相関の高いほぼ安定的な波長が得られたので,非破壊測定して得られたスペクトルの二次微分値を用いることで,デンプンの老化度をある程度推定できることが分かった.このことから,近赤外分光法により得られた波長領域を解析に用いることで,測定時間が短縮され,デンプンの老化度がリアルタイムでわかるので,さまざまなデンプンやデンプン性食品の老化の進行のシュミレイトに応用できるものと期待される.
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