研究概要 |
本年度の研究では、「食材のin vitro抗酸化活性の評価」→「活性成分の単離・構造解析・同定」→「調理加工による活性成分変化の分析」を実施し、次段階の「体内摂取後の血中の抗酸化活性の評価」実験を実施可能な食材を見出すことができた。具体的には、日本で飲用される様々な茶(煎茶、コーヒー、菱茶、ゴーヤ茶、麦茶、黒豆茶、そば茶)を調整し、ラット脳脂質過酸化抑制活性を用いてスクリーニング評価を実施した。本試験において、優れた活性を示し、かつ、活性成分の報告が見当たらない菱茶の抗酸化成分について検討を加え、以下の3点を明らかとすることができた。(1)菱茶の原材料である菱の実に含有される主な抗酸化成分はgallic acid 、1,2,3-trigalloyl-β-glucoside、1,6-digalloyl-β-D-glucoside、1,2,6-trigalloyl-β-D-glucoside、eugeniin、1,2,3,6-tetragalloyl-β-D-glucosideであることを初めて明らかとすることができた。ラット脳脂質過酸化抑制系における各成分のIC50は、gallic acidが58 uM, それ以外は0.2-0.3 uM程度であった。(2)菱の実から得た6種の抗酸化成分は、血中の抗酸化力評価で使用予定の以下の試験においても優れた活性を示した。 ・OXY吸着テスト(次亜塩素酸消去能):IC50 0.9-6 uM(アスコルビン酸 43 uM) ・BAPテスト(鉄還元力能):IC50 15-32 uM(アスコルビン酸 90 uM)(3)菱の実に存在する6種の抗酸化成分は、熱水抽出中に重合し、菱茶中には遊離状態ではほとんど存在ないことが明らかとなった。抗酸化活性は遊離化合物の半分程度保持されていた。
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