本研究は、生活科学という複合領域的な切り口に立脚し、「食材のin vitro抗酸化活性評価」→「活性成分の単離・構造解析・同定」→「調理加工による活性成分変化の分析」→「食材として摂取した後の血中の抗酸化活性の評価」について一貫した研究を行うことを目的として実施している。本年度は、以下の2点の実験を並行して実施した。 1)加熱調理後の経口摂取時により強力な抗酸化活性を保持する食材を見出すことを目的に、有用な生理活性物質を有すると報告されるスパイス6種について加熱調理し、これらの有用な生理活性物質が加熱によりどのような物質に変化するかを明らかとする研究を実施した。 2)介入試験の実施計画を立案するため、介入試験で血中抗酸化力評価に用いる予定のBAPテスト(鉄還元力能)およびOXY吸着テスト(次亜塩素酸消去能)の平常時の値を調査(または測定)したところ、日内変動や当日の体調が大きく影響することが確認された。また、同じく介入試験の予備検討として、優れた抗酸化力を有することが明らかとなっており、摂取後の体内動態および吸収量が明らかとなっているアスコルビン酸、α-トコフェロール(サプリメントから抽出)、カテキン(茶から抽出)を用いて、これらの抗酸化物質を一定量摂取後の血中抗酸化物質量を算出し、上記2テストにおいて平常時との優位差が明らかとなるか実験した。その結果、いずれの抗酸化物質でも単回摂取で優位差を得るには一般に市販されるサプリメント等で定められる摂取量の2倍以上を摂取する必要があることが確認された。本研究室での実験により食材から得た抗酸化物質には上記の抗酸化物質よりも活性に優れたものも多数存在するが、これらについても上記2テストを実施したところ、食材あたりの含有量に換算した場合、仮に50%以上の吸収量が保持されたとしても優位差を得ることが難しいことが明らかとなった。
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