研究概要 |
本研究の目的は、良質なタンパク質源ではあるが硬さ・噛み切りにくさのために高齢者にとって食べにくい食肉をマイタケプロテアーゼの利用により、軟らかく食べやすくする調理方法の開発である。前年度までの研究において、注射針で肉内部にマイタケ抽出液を注入して加熱する方法により、課題であった「肉表面のべたつき」を伴わずに肉を軟化することが可能であること、マイタケプロテアーゼを作用させるためには70℃以下で加熱する必要があることを確認した。 平成25年度は、調理過程における食肉のタンパク質変化について調べた。マイタケ抽出液を注入後、70℃で2時間または6時間スチーミングした牛もも肉(mi2h肉, mi6h肉)を、未処理のまま同様に加熱した肉(nt2h肉, nt6h肉)と比較した。 水溶性タンパク質量は加熱により減少し、未処理肉(nt肉)では加熱時間の長いnt6h肉がnt2h肉に比べ少ない傾向が見られた。一方で、マイタケ抽出液で処理した肉(mi肉)では、mi6h肉がmi2h肉よりも多い傾向であった。mi肉とnt肉を比べると、mi肉の方が水溶性タンパク質量が有意に多く、またBradford法に比べ低分子のペプチドも測定できるBCA法における定量値では、その差がより大きかった。 SDS-PAGEでは、加熱により水溶性タンパク質の分子量パターンが大きく変化し、バンド数が減少した。nt肉とmi肉を比べると、mi肉では15kD以下のバンドが濃かった。筋線維タンパク質も同様にnt肉に比べmi肉では15kD以下のバンドが濃く、mi6h肉ではミオシン重鎖と思われる200kD のバンドがnt肉に比べ薄かった。 以上より、肉は加熱により不溶化するが、mi肉ではマイタケプロテアーゼの影響によりタンパク質が分解されて低分子化したこと、それに伴って水溶性タンパク質量も増加したことが示唆された。今後は、肉基質タンパク質(コラーゲン)についても調べる予定である。
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