研究課題/領域番号 |
23700891
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
時藤 亜衣 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (80461474)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 黒大豆ゲル / テクスチャー値 / 官能評価 / 嚥下造影検査 / 共分散構造分析 / 嚥下食 |
研究概要 |
加齢に伴う生理機能の低下や脳血管疾患の後遺症として、咀嚼・嚥下障害者が増加し、食受容の低下による低栄養状態が危惧されている。大豆は良質な植物性タンパク質給源であり、機能性に優れ、特に、黒大豆にはアントシアニン系のポリフェノール類が含まれ、抗酸化性が認められている。本研究では黒大豆を用いた嚥下食の開発を目的とし、今年度は黒大豆ゲルの調製条件の検討として、ゲルの物性値測定、黒大豆煮豆および煮汁の成分分析を行った。黒大豆ゲルの調製は分離大豆タンパク質濃度が13%~17%になるように黒大豆煮汁を加え、30mmφのケーシングに全量150gを充填し、加熱または加圧処理を行った。加熱処理は各試料を85℃の恒温槽中で、中心温度が80℃に達するまでの30分間加熱した。(加熱ゲル)。加圧処理は食品加圧試験装置(三菱重工業製:MFP-7000型)を用い、400MPaの静水圧で20分間加圧した(加圧ゲル)。これらのゲルの物性測定は特別用途食品えん下困難者用食品許可基準(2009年, 厚生労働省)の測定基準に基づき、クリプメーター(山電製:RE2-33005S)でテクスチャー値を測定した。加熱ゲルでは分離大豆タンパク質濃度が13~17%、加圧ゲルでは14~17%でゲルが形成され、いずれもえん下困難者用食品許可基準の物性規格に準拠していた。また、成分分析により、アントシアニンの含量は、煮豆よりも煮汁に多く溶出されていることが確認され、黒大豆ゲルの調製は煮汁の有効利用と考えられた。今後、官能評価、嚥下造影検査および咬合力のデータと物性値について共分散構造分析を行い、嚥下障害者の咬合力、嚥下機能に対応した黒大豆タンパク質ゲルの調製条件を再検討し、製品化に繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では黒大豆ゲルの調製は黒大豆粉末を用いる予定であったが、成分分析により、アントシアニンの含量は煮豆よりも煮汁に多く溶出されていることが確認され、分離大豆タンパク質に煮汁を添加した。また、分離大豆タンパク質はタンパク質濃度が約90%と高く、ゲル形成性や栄養価の面からも、良好なゲルが得られた。各黒大豆ゲルのテクスチャー値はえん下困難者用食品許可基準に該当し、嚥下食への利用の可能性が見出された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は官能評価データ、嚥下造影検査および咬合力のデータと機器測定による物性値について、統計解析ソフトSPSS(AMOS)を用い、共分散構造分析を行う。さらに、共分散構造解析によるモデルから、被験者の咬合力、嚥下機能に対応した黒大豆ゲルの嚥下適応評価を行い、その調製条件について得られた結果を取りまとめ、嚥下食への展開に繋げる成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は実験材料の他に、官能評価者への謝礼、統計処理ソフト専用のパソコンおよび成果報告のためのの交通費等に研究費をあてる予定である。
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