研究概要 |
【目的】大豆は良質な植物性タンパク質給源であり、特に、黒大豆にはアントシアニン系のポリフェノール類が含まれ、抗酸化性が認められている。前年度までの研究で、黒大豆煮汁中には、アントシアニンが煮豆の約140%、大豆イソフラボンは約30%含有していたことから、黒大豆を用いた嚥下食の開発として、黒大豆煮汁を添加した黒大豆ゲルを調製した。そのゲルのテクスチャー測定、官能評価および嚥下造影検査を行い、共分散構造分析を用いて黒大豆ゲルの嚥下食への展開を試みた。 【方法】黒大豆ゲルの調製は分離大豆タンパク質濃度が13%~17%になるように黒大豆煮汁を加えた。加熱処理は各試料を85℃の恒温槽中で、中心温度が80℃に達するまでの30分間加熱した(加熱ゲル)。加圧処理は食品加圧試験装置を用い、400MPaの静水圧で20分間加圧した(加圧ゲル)。ゲルの物性測定はえん下困難者用食品許可基準の測定基準に基づき、クリプメーターでテクスチャー値を測定した。官能評価は5段階評点尺度法で行った。嚥下造影検査は軽度の嚥下障害患者を対象とした。それらのデータ間の因果関係、潜在因子について共分散構造分析(SPSS,AMOS19.0)を用いて定量化した。 【結果・考察】黒大豆ゲルのテクスチャー値は、加熱ゲルでは13~17%、加圧ゲルでは14~17%でゲルが形成され、いずれもえん下困難者用食品許可基準の物性規格に準拠していた。加圧ゲルおよび加熱ゲルの官能評価では、加圧ゲルの方が外観、テクスチャー、風味および易嚥下性に関る項目で高く評価された。また、官能評価項目間の因果関係については、潜在因子「咀嚼、嚥下の容易さ」に対する標準化推定値が残留感、飲み込み易さ、弾力、風味の順に高かった。また、嚥下造影検査により、14%加圧ゲルでは咽頭残留がなく、最もスムーズな嚥下特性が認められ、嚥下食への有用性が示唆された。
|