研究概要 |
本研究は食品成分であるチオヒダントインの抗酸化性とそのメカニズムを解明するとともに,チオヒダントインの生体内における変化を解明することを目的としている。食品中に見いだされるイソチオシアナート(アリル,3ブテニル,4メチルチオ3ブテニル)と各種アミノ酸から調製したチオヒダントイン(ATH-a.a, 3BTH-a.a, MTBTH-a.a)を用いて以下の結果を得た。1)ATHを用いて各種pH条件下ならびに各種温度条件下におけるチオヒダントインの安定性を検討した。チオヒダントイン溶液をpH1~11に調整した緩衝液と混合して4℃で静置し継時的に270 nmの吸光度を測定して残存率を調べた。いずれのATHもpH1~7では極めて安定であり,168時間経過後も90%以上が残存していた。pH10,11ではいずれのATHも反応開始直後に50%程度まで残存率が低下し,24時間後にはほとんど残存していなかった。次にpH5の緩衝液と混合し,25,36,50,75,100 ℃での安定性を検討した結果,25,36℃では,ATH-Lys, Ser, Thrを除くATHはきわめて安定であった。高温になるに従っていずれのATHも残存率の低下が早まったが,100℃,24時間後でも30~80%が残存しており,高温条件下でも比較的安定であることが明らかになった。2)ABTSラジカル消去活性試験を行った結果,Gly, Glu, Tyr, Trp, Ser, Hisから調製したチオヒダントインに強いラジカル消去活性が認められた(IC50 8~42microM)。Gly, Gluはイソチオシアナートに由来する部分構造が変わっても活性の強さに変化はなかったが,Tyr, Trpの活性の強さはATH>3BTH>MTBTHとなった。ATHを用いてDPPHラジカル消去活性試験を行った結果,顕著な活性を示すものは見られなかった。
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