研究課題/領域番号 |
23700894
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
有井 康博 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 講師 (60360484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 鉄分強化 / 鉄欠乏性貧血 / 栄養機能性食品 / ミネラル不足の改善 |
研究概要 |
本申請課題は鉄欠乏性貧血の改善を目指した鉄分強化豆腐の加工法を確立することを目的としている。 鉄分の不足は貧血等の疾患を引き起こす。日本における鉄欠乏性貧血の患者数は、その予備軍も含めると人口の1/3に達すると考えられている。そのため、予防法の確立が注目されている。現在のところ、鉄分をタブレットで摂取する形態が主要な摂取方法として実施されている。しかしながら、タブレット形態での摂取に抵抗感を覚える患者は多く、申請者は食品形態での摂取法を確立したいと考えている。そこで、ミネラルを有効的に添加することが可能な豆腐を選択し、鉄分強化豆腐の開発を考えた。また、その他のミネラルについても同様な方法を適用することで、ミネラル強化豆腐の開発に繋げたいと考えている。 平成23年度は以下のことについて検討した。二価鉄、三価鉄、銅、亜鉛、マンガン、ニッケルについて、豆腐様の沈殿形成が可能であるかについてを検討した。また、二価鉄が三価鉄に酸化され易いという性質をもつ一方で、吸収され易いという特長をもつことから、抗酸化剤として食品添加物に使用されるアスコルビン酸ナトリウムを添加する条件においても豆腐様の沈殿形成が行われるかについて調べた。 以上の結果、試した全ての金属イオンにおいて、沈殿が形成することを確認した。その適正な濃度範囲も確定した。また、アスコルビン酸ナトリウムの添加によっても、沈殿形成に影響がないことが明らかになった。さらに、これらの研究の中から、木綿豆腐と絹ごし豆腐の形成機構における差異が明らかになってきた。 これらの研究成果から、本年度は特許出願を行った。また、豆腐の形成機構については、現在、国際誌に投稿できるように準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者が申請書において、平成23年度に行う予定であった研究内容は以下に示す2つである。(1)鉄イオン濃度依存的豆腐形成、(2)鉄分強化豆腐の物性測定。前者は当初計画したステップをクリアし、予定以上のデータを得ることができた。とくに、鉄強化豆腐の加工に適する鉄イオン濃度の適応範囲が明確にできたことは、本申請課題の達成に向けて、大きな飛躍であると自己評価を行っている。後者はラージスケールの豆腐加工に少し時間を要しており、当初予定していたステップまで達していない。しかしながら、豆腐加工の条件も徐々に確立できている。 以上の状態では(3)相当する、「やや遅れている」という状態だと評価するが、一方で、当初は平成25年度に予定をしていた、豆腐中の鉄イオン酸化防止法の確立については、その一部を23年度に実施し、良好な結果を得ることができている。よって研究の進行状況としては、(2)のおおむね順調に進展していると評価した。 さらに、平成23年度中に、本研究課題をもとに「豆腐の製造方法およびそれで得られた豆腐」について特許出願を達成することができた。これは、鉄分強化豆腐を実用化するためには不可欠なステップであり、本申請課題が達成する目的の一つでもあった。それを初年度に達成できたことは、非常に価値があると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は鉄分強化豆腐を初めとするミネラル強化豆腐をラージスケールで加工し、その物性を比較する。また、豆腐中のミネラル含量を明らかにし、動物実験による栄養改善実験を予定している。さらに、豆腐中の鉄イオン濃度を測定する方法を確立し、二価鉄と三価鉄の保存中の挙動を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、栄養改善実験に必要なデータとして、鉄分強化豆腐中の鉄分含有量を明らかにする。また、タンパク質、脂質、糖質などの定量を行い、鉄分強化豆腐の簡易な食品成分表を作成する。それに加え、添加した鉄量と豆腐の物性の相関性を明らかにし、食感に違和感がない鉄分強化豆腐の加工法を確立する。
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