研究課題/領域番号 |
23700899
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 奈穂 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90510529)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 食事療法 / 運動療法 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
メタボリックシンドロームの予防と改善には、食生活の改善すなわち食事療法と運動不足の改善すなわち運動療法をストレスなく、バランス良く行うことが重要であると考えられる。そこで、本研究では実験動物にストレスが少ないホイールケージを用いた自発的運動による運動療法と食品由来の機能性成分を利用した食事療法の相加・相乗作用によるメタボリックシンドロームの効率的な予防・改善について評価を行う。 具体的には、マウス由来の肝細胞、筋細胞、脂肪細胞を用いて、ポジティブ/ネガティブコントロールに対する各器官の応答性の違いを比較検討し、脂質代謝異常、炎症および酸化ストレスマーカーを改善する食品由来機能性成分のスクリーニングを行うこととした。ポジティブ/ネガティブコントロールとして、CLAはマウスにおいて、著しい脂肪肝を発症するが、劇的な体脂肪減少作用を発揮することが知られており、また、運動持久力を向上させることも報告されている共役リノール酸(CLA)を選択した。 まず、今回のスクリーニングの基礎となるCLAに対する各種細胞の応答性について、WST-8 assayおよび細胞タンパク量測定による細胞毒性および濃度依存性、細胞のOil Red O 染色、細胞および培地中の各種脂質測定、細胞の遺伝子発現量解析、培地中の炎症マーカー測定の項目について評価を行った。その結果、予想に反して、肝細胞では脂肪滴の蓄積は観察されず、筋細胞では活発な細胞分裂を誘導せず、脂肪細胞では脂肪滴の蓄積は抑制されたものの、アポトーシスを誘導する、という結果になった。以上の結果より、想定していたCLAはポジティブ/ネガティブコントロールとしては適切でないことが明らかとなり、新たなスクリーニング方法の確立が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞培養実験において、共役リノール酸(CLA)を肝細胞に対してはネガティブコントロールとして、筋細胞と脂肪細胞に対してはポジティブコントロールとしての利用を目論んでいた。しかしながら、肝細胞においては予想に反して脂肪滴の蓄積は観察されず、筋細胞においては活発な細胞分裂を誘導せず(CLA無添加培地とほぼ変わらない)、脂肪細胞においては脂肪滴の蓄積は抑制されたものの、アポトーシスを誘導する、という結果になった。また、CLAの添加濃度をあげると、3つの培養系全てで有意な細胞毒性が観察され、これらの結果から、CLAはネガティブ/ポジティブコントロールとしては不適切であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いた新たなスクリーニング系の確立を目指しながら、in vivoでの評価を進めていく。具体的には、非運動群(定常状態群)および自発運動群を設定し、さらにそれぞれの群をノーマル食および高脂肪・高炭水化物食摂取の2群に分け、短期(4週間前後を想定)と長期(10週間前後を想定)で飼育を行う。自発運動群は毎日、運動量(回転数)を観察する。飼育期間中、呼気ガス測定によるエネルギー代謝測定を行い、非運動群および自発運動群のエネルギー代謝変動の比較、ノーマル食および高脂肪・高炭水化物食のエネルギー代謝変動の比較を行う。in vitroにおいては、CLAはネガティブ/ポジティブコントロールとしては不適切であると考えられたが、in vivoでのCLAの作用は明らかであるため、食餌に添加することで対照として用いることとする。さらに、これまで、自身が行ってきた研究により、ある食品成分が脂質低下作用および糖代謝異常改善作用を有することを明らかとしたため、この食品成分をポジティブコントロールとして追加して、評価を進めていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種細胞の培養に必要となる試薬類、マウス、マウス解剖後の分析に必要となる試薬類、自発運動評価系に利用するホイールケージなどを購入する。
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