研究課題
平成25年までの研究から高脂肪食負荷mIRマウスの糖尿病発症には、当初予想していた膵β細胞の脂肪毒性ではなく脂肪組織と肝臓での代謝変化が重要であることが明らかになった。特に、脂肪組織の脂肪分解が高脂肪食負荷により亢進することが判明し、脂肪分解により産生されたグリセロールが肝臓に取り込まれ、糖新生に利用され、高血糖が惹起されることが解明された。そこで、最終年度の平成25年度には、高脂肪食負荷により脂肪組織での脂肪分解が亢進する分子機構を解析した。その結果、mIRマウスの脂肪組織では、通常食下ではPPARγの発現が低下し脂肪分解が抑制されているものの、高脂肪食負荷時にはこの抑制がマスクされ、脂肪分解が過剰になることが明らかになった。そこで、mIRマウスに野生型マウスの皮下脂肪を移植したところ、高脂肪食負荷時の高血糖は有意に抑制され、脂肪組織のインスリン作用障害が高脂肪食負荷mIRマウスの糖尿病発症に重要な役割を果たすことが証明された。一方、マウスにグリセロールを投与すると肝臓での糖新生酵素の発現が誘導されることから、糖新生の亢進は肝細胞内の解糖系基質の量によって規定されることが明らかになった。本研究により、インスリン抵抗性マウスを用いて高脂肪食負荷時の糖尿病発症の1つのメカニズムが解明された。すなわち、脂肪組織での脂肪分解の亢進によりグリセロールが過剰産生され、肝臓で糖新生が亢進し糖尿病を発症するというメカニズムである。我々アジア人では肥満は軽度であるが糖尿病を発症する例が多く、mIRマウスと同様の機序が関与している可能性がある。脂肪細胞での脂肪分解抑制や肝臓での糖新生の抑制が新たな糖尿病治療標的となる可能性も示唆された。
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J Endocrinol
巻: 218 ページ: 25-33
10.1530/JOE-12-0579.
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/physiol/index.html