研究課題/領域番号 |
23700901
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
岸本 良美 お茶の水女子大学, 生活環境教育研究センター, 研究機関研究員 (70600477)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / TG-richリポ蛋白 / 血管炎症 / ポリフェノール |
研究概要 |
近年、脂質の摂取量の増加に伴い、食後の血管炎症が問題視されており、動脈硬化予防の大きなターゲットとなっている。そこで本研究では、脂質摂取後に血中に増加するTG-richリポ蛋白を、炎症惹起因子の一つであると考え、TG-richリポ蛋白による血管炎症反応機構と、ポリフェノールによる改善作用を明らかにすることを目的とした。1) TG-richリポ蛋白の分取健常成人男性に高脂質食(パン、マヨネーズ30 g)を摂取させ、摂取2時間後に採血し、超遠心(100,000 rpm, 5時間)により、TG-richリポ蛋白(比重<1.006)を分取する方法を確立した。さらにエンドトキシンが混入していないことをリムルス法にて確認し、実験に用いた。2) TG-richリポ蛋白による血管内皮機能障害に対するポリフェノールの影響ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にTG-richリポ蛋白(75 μg/ml)を刺激し、ポリフェノールの血管内皮機能改善作用を検討した。その結果、ブドウ若芽から抽出したポリフェノールは、TG-richリポ蛋白刺激により亢進した活性酸素種(ROS)の産生、ならびに炎症性サイトカインの発現を抑制することが明らかとなった。さらに、ブドウ若芽ポリフェノールは血管内皮細胞への単球接着を抑制し、その機序としては接着分子(ICAM-1、VCAM-1)の発現抑制が関与していることが示された。本年度の結果より、脂質摂取後に増加するTG-richリポ蛋白は、血管内皮細胞において炎症反応を惹起すること、さらにポリフェノールにより改善効果が期待されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TG-richリポ蛋白の分取条件を確立し、初年度の目的であったTG-richリポ蛋白による血管内皮機能障害に対するポリフェノールの影響について、検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は血管炎症のもう一つの重要なターゲットである単球についても検討を進める。さらに、ポリフェノールの作用メカニズムについても解明を目指す。1) TG-richリポ蛋白による単球活性化に対するポリフェノールの影響 ヒト単球系細胞株(THP-1細胞)、またはヒト末梢血より単離した単核球(PBMNC)にTG-richリポ蛋白(75 μg/ml)を刺激し、以下の項目によりポリフェノールの白血球活性化の抑制作用を検討する。評価項目としては、活性酸素種(ROS)産生、炎症性サイトカイン発現、インテグリン発現ならびに血管内皮細胞への接着、 Matrix Metalloproteinase(MMP)活性、 Toll-like receptor (TLR) 2/4発現とする。2) ポリフェノールによる血管炎症反応抑制作用メカニズムの解明 PKC経路、MAPK経路、NF-κB活性等、炎症反応への関与が考えられる経路について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費については、細胞培養ならびにreal time PCRやwestern blot、ELISAなどの分子生物学的手法に大部分の予算を使用する予定である。成果発表ならびに情報収集のため、国内外の学会にも積極的に参加する。
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