研究課題
近年、脂質の摂取量の増加に伴い、食後の血管炎症が問題視されており、動脈硬化予防の大きなターゲットとなっている。そこで本研究では、脂質摂取後に血中に増加するTG-richリポ蛋白を、炎症惹起因子の一つであると考え、TG-richリポ蛋白による血管炎症反応機構と、ポリフェノールによる改善作用を明らかにすることを目的とした。2年目の本年度は、昨年度の成果であるポリフェノールによる血管内皮機能障害の改善作用についてメカニズムの検討を進めた。また、単球の活性化に対するポリフェノールによる抑制効果についても検討を進めた。1) TG-richリポ蛋白刺激下の血管内皮細胞におけるポリフェノールの作用機構ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にTG-richリポ蛋白(75 μg/ml)を刺激し、ポリフェノールの血管内皮機能障害改善作用のメカニズムを検討した。その結果、ブドウ若芽から抽出したポリフェノールは、TG-richリポ蛋白刺激によるToll-like receptor発現ならびにNF-κBの活性化を抑制することが示された。2) TG-richリポ蛋白による単球の活性化に対するポリフェノールの影響ヒト単球系細胞株(THP-1)にTG-richリポ蛋白(75 μg/ml)を刺激し、ポリフェノールの単球活性化に対する影響を検討した。その結果、ブドウ若芽から抽出したポリフェノールは、TG-richリポ蛋白刺激により亢進したNADPH oxidaseの活性化ならびに血管内皮細胞への接着に関わるインテグリンβ1の発現抑制が認められた。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標であったTG-richリポ蛋白刺激下の血管内皮細胞におけるポリフェノールの作用機構ならびに、TG-richリポ蛋白による単球の活性化に対するポリフェノールの影響に関して新たな知見を得ることができた。
最終年度は、これまでの成果からTG-richリポ蛋白刺激による血管炎症改善作用が期待されるポリフェノールについて、ヒトを対象とした脂質摂取試験を行い、実際の生体における効果を検討する。健常成人に脂質と同時にポリフェノールを摂取させ、摂取後の血管内皮機能を評価する。さらに、摂取後の血液より単核球を分離し、単球活性化に対する影響を検討する。血中の炎症マーカー(CRP、TNF-α、MCP-1等)についても測定し、血管内皮機能ならびに単球活性化におけるポリフェノールの影響との相関を検討する。
消耗品費については、細胞培養ならびにreal time PCRやwestern blot、ELISAなどの分子生物学的手法に大部分の予算を使用する予定である。成果発表ならびに情報収集のため、国内外の学会にも積極的に参加する。
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