研究課題
近年、脂質の摂取量の増加に伴い、食後の血管炎症が問題視されており、動脈硬化予防の大きなターゲットとなっている。そこで本研究では、脂質摂取後に血中に増加するTG-richリポ蛋白を、炎症惹起因子の一つであると考え、TG-richリポ蛋白による血管炎症反応機構と、ポリフェノールによる改善作用を明らかにすることを目的とした。最終年度である本年度は、昨年度までの成果に基づき、脂質摂取後の炎症反応について健常成人を対象とした試験を実施し、調節機構の解明を目指した。健常成人男性を対象に、脂肪負荷試験を行ったところ、血清脂質(TG、VLDL-TG、遊離脂肪酸)濃度の上昇とともに、一時的な血管内皮機能の低下、白血球数の増加、高感度CRP値の上昇、血清マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)分泌量の増加といった血管炎症が認められた。ブドウ若芽から抽出したポリフェノールは、血清TGや遊離脂肪酸の上昇を抑制し、さらにこれらの血管炎症に対して予防的に働いた。TG-richリポ蛋白の炎症惹起因子の一つと考えられているアポリポ蛋白C3濃度についても測定したが、ポリフェノールの有無による有意な差は見られなかった。また、脂肪負荷後に分取した末梢血単核球(PBMNC)について、さらに詳細な検討を行ったところ、いくつかの細胞ストレスや炎症に関わる遺伝子において発現変動が見られた。本研究より、健常人に対する脂肪負荷において、血管内皮機能の低下、白血球数の増加といった血管炎症が惹起され、それらに関与すると考えられる遺伝子発現変動が観察された。いくつかの指標において、ポリフェノールは血管炎症の抑制作用を示したことから、食生活に効果的に取り入れることの有用性が示唆された。
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