研究課題/領域番号 |
23700907
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三宅 映己 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80573659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トランス脂肪酸 |
研究概要 |
申請者らは以前高脂肪食が原因の肥満では、抗原非特異的な免疫能の亢進がみられるが、ワクチンに対する抗体産生能、抗原特異的なリンパ球増殖能の低下がみられ、これらの免疫異常には樹状細胞の機能低下が関与していることを証明した。さらに、この実験過程で多くのマウスの肝臓での発癌を確認し、樹状細胞機能異常が発癌にも関与することが示唆された。しかし、高脂肪食の成分、含有脂肪酸の種類に対する検討は十分ではなかった。一方で、多くの人が摂取しているトランス脂肪酸は、動脈硬化の促進や発癌など人体への影響が危惧されているが、その代謝産物には抗炎症作用や癌の抑制作用があることなどの報告もあり不明な点が多い。そこで我々はトランス脂肪酸の肝臓での発癌や抗原特異的な免疫異常に与える影響を解明することを目的とし研究を行っている。4種類の食餌(コントロール食、トランス脂肪酸高含有高脂肪食、パルミチン酸高含有高脂肪食、オレイン酸高含有高脂肪食)を与え、4群間での体重、脂肪量についての比較を行ったところ、コントロール群に比較して高脂肪食群では有意な体重増加がみられた。高脂肪食群ではオレイン酸高含有群>パルミチン酸高含有群>トランス脂肪酸高含有群で体重が重い傾向であった。また、肝臓内の脂肪化の程度はオレイン酸高含有群で高度であった。その脂肪化の程度の違いを解明するために、PCR-arrayを用いて肝臓の組織中の脂質代謝の違いについて検討し、有用な因子について解析中である。また、血清を用いた炎症性サイトカインの検討を行った。コントロール群に比べて、高脂肪食群では炎症性サイトカインが高値であったが、3群間では差が見られなかった。しかし、肝臓内の免疫担当細胞の比率には変化が出ていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高脂肪食誘導肥満マウス作成段階で、同じ食餌であってもケージ間でマウスの体重増加の違いが生じた。最終的には給水管の不具合が原因であることがわかったが、原因が判明するまでに時間を費やしてしまった。その後は順調にマウスの作成が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
各種脂肪酸の高含有高脂肪食と通常食で飼育したマウスを用いて、血清中の変化、肝臓内での変化、免疫学的機能変化の解析を行う。各群の血清を用いて肝機能検査、酸化ストレスの測定を行う。PCR arrayを用いて肝臓内の脂質代謝、酸化ストレス、癌関連因子を網羅的に測定し有用な因子の解析を行う。免疫反応を確認するために、T細胞をCon AでB細胞をLPSで刺激し、サイトカイン産生能とリンパ球幼若化能の測定を、抗原特異的な反応として、ワクチンに対する反応、抗原に対する各種免疫担当細胞の機能を確認する。さらに、肝臓での発癌の有無と時期の確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き肥満マウスを作成するために、マウスと各種脂肪酸の高含有高脂肪食の購入を行う。また、肝臓内の脂質代謝、酸化ストレス、癌関連因子をの解析を行うためのPCR array、各群の血清を用いて炎症性サイトカイン、酸化ストレスの測定を行うためのELISAなどのkitを中心に購入する。さらに成果を報告するための論文投稿のためにも研究費を使用したい。
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