研究課題/領域番号 |
23700908
|
研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
池田 恵 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (90535402)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | アディポネクチン / 前駆脂肪細胞 / 細胞分化 / 食品 / 天然物 / 2型糖尿病 / インスリン抵抗性 / 脂肪細胞 |
研究概要 |
我が国において、患者数が増加の一途をたどっている糖尿上を克服するうえで、脂肪細胞に特異的に発現しているアディポネクチンが注目されている。アディポネクチンがインスリン感受性を増強することより、2型糖尿病などの生活習慣病を克服するための鍵分子であることが最近の研究の進展により明らかにされたからである。そこで我々はこれらの知見を基に、独自に確立したcell-basedスクリーニング、即ち前駆脂肪細胞の分化誘導活性を指標にする検索法を駆使してアディポネクチン分泌誘導物質の探索を行い、2型糖尿病治療としての可能性を明らかにすることを目的とした。平成23年度は、ST-13前駆脂肪細胞を用いて、1056種類の化合物の分化誘導活性の検討を行い、14種類の低分子化合物がアディポネクチンタンパクの細胞外への分泌を顕著に促進し検討し、分化誘導活性が最も強いものの一つであるプロピオン酸誘導体について以下の検討事項について突き止めた。(1) プロピオン酸誘導体が、アディポネクチンの分泌とmRNA発現を濃度依存的に促進することを見出し、転写レベルでのアディポネクチンの発現促進作用が関与している可能性が示された。(2) また、ルシフェラーゼレポーターアッセイは、プロピオン酸誘導体がfull PPARγアゴニストであるチアゾリジン化合物とは異なる作用機構、即ちpartialなPPARγアゴニスト作用を持つことを示唆した。(3) さらに、プロピオン酸誘導体はGLUT4の転写発現レベルを増加することを観察し、細胞内への糖取り込みを促進させる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ST-13前駆脂肪細胞を用いて、1056種類の化合物の分化誘導活性の検討を行い、14種類の低分子化合物がアディポネクチンタンパクの細胞外への分泌を顕著に促進し検討し、分化誘導活性が最も強いものの一つであるプロピオン酸誘導体について以下の検討事項について突き止めた。(1)アディポネクチンmRNAの発現を促進するかを、定量的RT-PCRを用いて解析し、(2)アディポネクチンの発現を制御している転写因子群、並びに脂肪細胞分化に関与している遺伝子群の発現を解析した。さらに(3)PPARアゴニスト作用を示すかをルシフェラーゼレポーターシステムを用いて検討することができた。これらの研究成果は、学会発表にて報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.アディポネクチン発現促進物質によるin vitroグルコース取り込み実験の検討を行う。細胞内インスリン作用を評価し、インスリン抵抗性の細胞内機序を解明するために、GLUT4のタンパク質発現量を確認後、インスリン刺激に反応して細胞内に取り込まれる糖の定量を2-DOG (2-deoxyglucose) 取り込み実験をもちいて測定したいと考えている。 2.キノコ抽出物によるアディポネクチン活性物質の探索について実験を進める。10種類のキノコ抽出物を試料として用い、前脂肪細胞株 (ST-13) を用いた分化誘導活性の測定を行う。アディポネクチン分泌誘導物質が確認された場合、その作用機序について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.消耗品(薬品、理化学用品等)の購入計画。 (1)、ST-13前駆脂肪細胞の分化誘導を指標にするスクリーニングでは、大量の細胞培養用の理化学用品やウシ胎児血清を購入する。(2)、アディポネクチンmRNA発現への影響を調べるにあたり、試薬(DNAマイクロアレー、リアルタイムPCA、ELISA、ウェスタンブロット、光親和型固定化法、)を購入する。(3)、ヒト由来の前駆脂肪細胞の分化に対する作用を調べるため、ヒト由来前駆脂肪細胞を購入する。 2.研究発表、論文複写に使用する予定。
|