過栄養や運動不足などのライフスタイルの変化により、内臓脂肪蓄積を主原因とする2型糖尿病等の生活習慣病が増加している。我々は、独自に確立したcell-basedスクリーニング、前駆脂肪細胞の分化誘導活性を指標にする検索法を用いて、アディポネクチン分泌誘導物質の探索を行い、2型糖尿病治療としての可能性を明らかにすることを目的とした。 1.ST-13前駆脂肪細胞を用いて、1056種類の化合物の分化誘導活性の検討を行い、14種類の低分子化合物がアディポネクチンタンパクの細胞外への分泌を顕著に促進し、分化誘導活性が最も強いものの一つであるプロピオン酸誘導体について検索した。(1)アディポネクチンmRNAの発現を促進するかを、定量的RT-PCRを用いて解析し、(2)アディポネクチンの発現を制御している転写因子群、並びに脂肪細胞分化に関与している遺伝子群の発現を解析した。プロピオン酸誘導体が、アディポネクチンの分泌とmRNA発現を濃度依存的に促進し、転写レベルでのアディポネクチンの発現促進作用が関与している可能性が示された。(3)PPARγアゴニスト作用を示すかルシフェラーゼレポーターシステムを用いて検討し、プロピオン酸誘導体がfull PPARγアゴニストであるチアゾリジン化合物とは異なる作用機構、即ちpartialなPPARγアゴニスト作用を持つことを示唆した。また、(4)プロピオン酸誘導体はGLUT4の転写発現レベルを増加することを観察した。これらの結果から、アディポネクチン発現促進物質によるin vitroグルコース取り込み実験の検討を行うこととした。
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