研究課題/領域番号 |
23700910
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
趙 娟 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20381890)
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キーワード | 大豆イソフラボン / 卵巣摘出 / 認知機能 |
研究概要 |
大豆イソフラボンは、ラットの卵巣摘出による認知機能低下を抑制することが示されているが、その効果発現機序には、不明な点が多く残されている。我々は、マウスにおいてイソフラボンが認知機能改善作用を有するインスリン様成長因子-1(IGF-1)産生を促進することを明らかにした(Zhao J, et al. J Nutr Biochem 2011; 22:227-33.)。本研究では、大豆イソフラボンが、卵巣摘出による認知機能低下をIGF-Iの産生を増加させることで改善するか否かを検討し、それらの結果を基に、大豆イソフラボンを含んだ認知機能低下などの更年期障害を改善する機能性食品の開発へと応用することを目的とする。今までは、大豆イソフラボンの配糖体類とアグリコン類の投与により、卵巣摘出によるマウスの認知機能の低下が抑制され、マウス海馬でのIGF-1タンパク質の濃度の低下が抑制されることを確認した。更に、大豆イソフラボン類の投与は卵巣摘出マウスにおいて、海馬神経細胞の新生を促進することを免疫染色方法で確かめた。しかし、大豆イソフラボン類を投与後、卵巣摘出マウス海馬でのIGF-I mRNAの発現レベルの変化はなかった。従って、大豆イソフラボン類投与によって、マウス海馬でのIGF-Iタンパク質濃度の増加は血液中IGF-Iの海馬への誘導による可能性が高いと示唆された。今後、IGF-Iレセプターに特異的なアンタゴニストを用いて、大豆イソフラボン類の投与によるマウス卵巣摘出後の認知機能低下を抑制する効果への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年8月1日から平成24年10月13日までに、産前産後の休暇を取得したため、実験の進行が遅れた。 平成24年度の実験計画通り、大豆イソフラボン類投与後の卵巣摘出したマウス海馬のCGRP、IGF-I、及びIGF-I mRNA濃度を測定した。海馬IGF-Iタンパク質濃度が卵巣摘出によって低下し、大豆イソフラボン類の投与によってその低下が抑えられた。海馬CGRP濃度、及びIGF-I mRNAの発現量は大豆イソフラボン類投与による変化がなかった。また、海馬神経細胞の新生は大豆イソフラボン類投与によって促進されることを確かめた。以上の結果により、大豆イソフラボンは海馬IGF-I濃度を増加させ、海馬神経細胞の新生を促進することによって、卵巣摘出後認知機能低下を抑制する可能性があると示唆された。しかし、大豆イソフラボンの卵巣摘出による認知機能低下抑制の分子機構の解明にまだ足りず、今後海馬IGF-Iタンパク質の由来、及びIGF-Iの役割を確かめるために、血中IGF-Iの測定、またはIGF-Iレセプターに特異的なアンタゴニストを用いた大豆イソフラボン類による卵巣摘出後認知機能低下の抑制効果への影響を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実験結果をふまえ次年度の研究期間内に次の課題を解決してきたい: ①大豆イソフラボン類投与による血中IGF-I濃度の変化。血中IGF-I濃度が大豆イソフラボン類投与によって上昇すれば、海馬IGF-I濃度の増加は血中から誘導されたと結論に導く。予測と反したら海馬でIGF-Iレセプターの変化が考えられるため、レセプターの変化を免疫染色方法で確認する。 ②IGF-Iレセプターに特異的なアンタゴニストを用いて大豆イソフラボン類による卵巣摘出後認知機能低下の抑制効果への影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に産休の取得などにより研究の進行が遅れた。平成25年度に追加実験を行うとともに、研究成果を取りまとめる予定である。この期間における育児による実験等の制約を補うため、実験補助者を雇用して実験の一部を補助し、効率よく研究を遂行していく必要がある。または、追加実験のため、血中IGF-I濃度を測定するためのELISA キットの購入、IGF-Iレセプターに特異的なアンタゴニストの購入、卵巣摘出マウスモデル作成のためのマウスの購入、イソフラボンを含む飼料の購入、免疫組織染色抗体、及び免疫染色に用いる試薬などの消耗品購入、または論文投稿及び学会発表を行うため、申請した金額が必要である。
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