研究課題
近年、炎症性腸疾患患者数が増加しており、食生活の変化がその要因の一つとも言われている。発酵食品の摂食量は減少しているが、一方で発酵食品中の因子が腸炎改善作用を有する可能性を示唆するエピソードが存在する。炎症性腸疾患は自己免疫疾患と考えられていたが、近年では腸内細菌が発症に関与していることが明らかとなっているが、発酵食品は腸内細菌叢を改善するという報告もある。発酵食品でありかつ百薬の長として食経験も長い日本酒から、機能性を有するペプチドを同定することを目的として研究を行った。先行研究により、肝炎に対し抗炎症効果を示す難消化性ペプチド、ピログルタミルロイシン(pyroGlu-Leu)を日本酒中に同定した。このpyroGlu-Leuをデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルマウスに経口投与したところ、0.1 mg/kg、一日一回投与の低用量で腸炎抑制効果を認めた。さらに、我々のグループが独自に開発したAutofocusing 法(分取型等電点電気泳動)や分取型逆相クロマトグラフィーで日本酒を分画したところ、pyroGlu-Leu以外の複数の機能性ペプチドを分離、同定することができた。これらの日本酒由来ペプチドもDSS誘発性大腸炎モデルマウスにて一日一回1.0 mg/kgの低用量経口投与で腸炎抑制効果を示した。以上の結果から、これらの日本酒由来機能性ペプチドは、生体内で低濃度で効果を示すことが明らかとなり、副作用の少ない炎症性腸疾患治療法として応用できることが示唆された。
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Curr Pharm Biotechnol
巻: 1 ページ: 156-164