生活習慣病の発症には遺伝因子と環境因子が関与すると考えられているが、近年、”栄養環境”が関与するという”生活習慣病胎児起源仮説”が注目されている。これは胎生期の不適切な栄養環境が、遺伝子発現の制御系にエピジェネティックな変化を起こして生活習慣病の素因を作り、さらに、生後の成長過程で不適切な環境因子に暴露されると疾患発症が加速されるという仮説である。本研究では生涯にわたる適切な栄養環境の制御が生活習慣病の発症をいかに制御するかについて検討を行った。遺伝的背景を持つ生活習慣病モデル動物と、持たない正常動物を用いて、生活習慣病の病態マーカーの変化を比較検討を行った。その結果、正常動物に比べ、生活習慣病モデル動物の方が生活習慣病関連マーカーは高値を示しており、糖代謝や脂質代謝などに関連する既知の生活習慣病関連遺伝子発現に変化がみられた。また栄養条件の異なる飼料を摂取させ、その影響を検討したところ、遺伝子発現量の変動を示すものが認められた。変動を示した遺伝子の脱メチル化に関連する酵素の遺伝子発現量を検討したところ、正常動物では発現量が上昇するのに対し、生活習慣病モデル動物において発現量が低下していた。この変化が代謝関連遺伝子の発現量を変化させ、生活習慣病の発症に関与している可能性が示唆された。
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