食生活において果物や野菜を避けなければならなくなる口腔アレルギー症候群(OAS)は、食物アレルギーの中でも増加傾向にあり、その対策が求められている。本研究では唾液中の成分で、アレルギーの化学伝達物質であるヒスタミンが、OASのバイオマーカーになりうるか検討した。口腔アレルギー症候群の被験者(A)と健常者の被験者(B)に同じ環境の下、唾液を採取し、そのヒスタミン量を測定した。普段の生活の中では、両者間で唾液中のヒスタミン濃度に違いが見られなかった。口腔アレルギーを発症する果物を食べてもらったところ、被験者(A)では口腔内に違和感があるときの唾液中ヒスタミン量が増加したが、被験者(B)では増加しなかった。複数回同じ実験を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。このことから、口腔内に違和感が生じるような環境で唾液中ヒスタミン量を調べると、(A)と(B)とで違いが現れる可能性が示唆された。今後は被験者を増やして上記の内容を確認する必要がある。 口腔アレルギーの原因物質の性質を調べる目的で、イチゴのアレルゲンであるFra a 1タンパク質について、組み換え体タンパク質の立体構造を真空CDで調べた。試料を60℃以上にしてから冷却すると、不可逆的な構造変化が見られた。その構造変化が、エピトープ付近であったことから、加熱によってアレルゲンのIgE結合能が変化する可能性が示唆された。イチゴのOASは、シラカバ花粉のアレルゲンと交差性を有することから、シラカバ花粉症の人の血清を抗体として、Fra a 1との結合をウェスタンブロットで検討した。結合の度合いがFra a 1の加熱処理によって変更するかどうかを調べることが目的であったが、ウェスタンブロットに適した条件を見つけることができなかった。今後はウェスタンブロットに適した血清もしくは血清から抗体の精製などを検討する必要があると思われる。
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