研究課題
酸化修飾を受けた低密度リポタンパク質(LDL)はアテローム性動脈硬化発症の直接的な原因となる。12/15-リポキシゲナーゼはアラキドン酸に酸素1分子を添加して、ヒドロペルオキシ酸と呼ばれる過酸化脂質を生成する酵素で、LDLに含まれるコレステロールにエステル結合した脂肪酸にも直接酸素を添加できるという広い基質特異性を持つ。12/15-リポキシゲナーゼはLDLの酸化修飾に重要な役割を果たしていることが知られている。したがって、12/15-リポキシゲナーゼの働きを制御することができればLDLの酸化が抑えられ、動脈硬化発症の抑制の可能性が期待される。本研究では、12/15-リポキシゲナーゼを制御できる新たな食品素材およびその活性成分の探索として中国茶に注目し、これに含まれる12/15-リポキシゲナーゼを阻害する成分を同定することを目的に研究を行った。昨年度までの研究から、本酵素阻害をターゲットとしてスクリーニングを行った数種類の中国茶の中で、本酵素を阻害することが知られるエピガロカテキンなどのカテキン類の含量が少なく、比較的低い濃度で阻害できる中国茶として青山緑水に焦点を当てて研究を進めた。青山緑水の抽出物から得られた本酵素を阻害する3つのピークのうち、本酵素を最も強く阻害したピーク1を逆相HPLCにより単離した。これを各種2次元NMRおよび高分解能エレクトロスプレーイオン化質量分析などの解析を行った。その結果、本成分は新規モノテルペン配糖体であることが明らかとなり、Liguroside Aと命名した。このLiguroside Aは、光照射によりピーク3に含まれる新規成分に変換され、これをLiguroside Bと命名した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、数種類の中国茶の中からカテキン含量の比較的少ない中国茶の1つである青山緑水に注目して研究を進めた。HPLCを用いた抽出物の分画により、青山緑水に含まれる白血球型12-リポキシゲナーゼ阻害の活性成分として新規のモノテルペン配糖体であるLiguroside AとLiguroside Bの構造を決定した。
本年度の研究において、青山緑水中に含まれる12/15-リポキシゲナーゼを阻害する2つの新規化合物の構造を決定した。これらの新規化合物を高含有する抽出物あるいはこれら新規化合物を大量に単離し、12/15-リポキシゲナーゼを発現している細胞による脂質の酸化に対する影響を検討する。さらに、青山緑水に含まれる活性成分の生体への吸収代謝への影響などを検討するとともに、動脈硬化モデル動物を用いた研究を行っていくことで、動脈硬化発症予防効果を検討する。
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Molecules
巻: 18 ページ: 4257-4266
10.3390/molecules18044257