研究課題/領域番号 |
23700917
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
中田 和江 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (60411740)
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キーワード | 腸管マクロファージ / 腸管免疫機構 / 腸管感染症 / 腸内細菌 / 感染防御 |
研究概要 |
これまで、腸管マクロファージの異物識別機構についてLPS等のPAMPsに対する応答性を調べたものは多いが、細菌を対象としたものはまだ殆どない。そこで、感染防御機構における腸管マクロファージの役割を明らかにすることを目的に、細菌に対する応答性について解析を行った。今年度は、グラム陰性菌のE. coli、V. parahaemolyticus、グラム陽性菌のS. aureus、L. caseiを用いて貪食能、殺菌能、サイトカイン産生能をマクロファージ培養細胞株RAW264.7と比較した。FITCラベルした死菌の貪食率をフローサイトメトリーにより解析した結果、腸管マクロファージ、RAW264.7共にE. coli、V. parahaemolyticus、S. aureusで高い貪食率が認められたが、L. caseiではほとんど認められなかった。殺菌能では、V. parahaemolyticus、S. aureus、L. caseiでRAW264.7よりも高い傾向が見られた。サイトカイン産生能では、RAW264.7と比較すると低いが腸管マクロファージでもTNF-α、IL-12でE. coli、V. parahaemolyticus、S. aureusで産生が認められ、L. caseiでは産生されなかった。特にIL-12の産生はRAW264.7と有意差が無かったこと、IL-12の誘導には貪食が深く関与しているとの報告があることから、腸管マクロファージでの炎症性サイトカイン産生に貪食が関与している可能性が示唆された。一方で非炎症性サイトカインであるIL-10産生では、貪食率が低かったL. caseiを含め全ての細菌で産生が認められ、貪食とは異なる経路で誘導される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管マクロファージの単離法については、昨年度確立したマグネチック粒子標識-抗CD11b抗体を使わないネガティブセレクションについても検討した。しかし、収集した細胞をCD68やF4/80等のマクロファージマーカーの発現で評価したところ、マクロファージの収率が上がらなかったことから、現行の単離法で実験を進めることとした。腸管マクロファージを用いた研究では、C57BLマウスを用いられている報告が多いことから、これまで使用していたBALBマウスからC57BLに変更した。その結果、C57BLマウスではBALBマウスよりもIMの収率が2/3程に落ちたが、使用するマウスの数を増やすことで回避出来た。貪食能や殺菌能等、細菌を使った実験系も順調に確立することが出来た。実験の都合上、細菌の種類を多く検討することが出来なかったが、グラム陰性菌と陽性菌、病原性細菌と食品由来の細菌を使用することで、細菌によって誘導される応答(貪食、殺菌、サイトカイン産生)の違いや傾向を確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
腸管マクロファージの細菌に対する異物応答性では、貪食能や殺菌能、非炎症性サイトカインのIL-10産生においてRAW264.7と変わらないことが確認された。一方で炎症性サイトカインのTNF-α、IL-12産生は、RAW264.7よりも低いものの、E. coli、V. parahaemolyticus、S. aureusでネガティブコントロールよりも有意な産生が認められた。最近の研究から、マクロファージ等の食細胞では細菌貪食後の異物識別機構に焦点が当てられてきていることから、腸管マクロファージの異物識別と貪食との関係について詳細な解析を進めていく。具体的には、炎症性サイトカイン産生に貪食が関与しているか貪食阻害剤(cytochalasin D等)を使用し、サイトカイン産生に影響が出るか解析を行う。これまでLPS等のPAMPsではTNF-αやIL-12の産生は単球等と比較し殆ど産生されていないと報告されているが、具体的な値を示しているものは少ない。そこで、得られた結果が細菌特異的応答であるか、PAMPs(LPS、PGN、Flagellin等)での応答と比較する。腸管マクロファージでの異物識別やシグナル誘導経路について、タンパク質あるいはmRNA発現をウェスタンブロッティングやreal time PCR等から解析する。菌添加の有無によって変動する転写因子(NF-κB、IRF3/7、AP-1等)を調べ、関連するシグナル経路やレセプターの発現等について解析を進める。また、腸管での感染防御における腸管マクロファージの生理的役割を確認するため、ストレス等によって免疫力低下させたマウスでの腸管マクロファージの機能(貪食能、サイトカイン産生能)変化等についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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