研究課題/領域番号 |
23700918
|
研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
西田 由香 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (40435053)
|
キーワード | 時間栄養学 / 摂食時刻 / 摂食タイミング / アミノ酸代謝 / 栄養管理 / 食事療法 |
研究概要 |
【目的】同じ栄養組成の食事でも「いつ(どのタイミングに)食べるか」によって生体への影響は異なる。今年度は蛋白質・アミノ酸代謝に着目し,蛋白質の量や質・摂食タイミングの異なる条件下での血中アミノ酸濃度の日内変動ついて検討した。 【方法】Wistar系9週齢の雄ラットを用い,低蛋白質食群,普通蛋白質食群,高蛋白質食群の3群に分け,各蛋白質エネルギー比を5%,20%,35%とした。食餌は暗期の10:00~16:00に3週間自由摂食させ,8時,13時,18時,23時に各群5匹ずつ門脈と肝静脈から同時採血を行い,各アミノ酸の血中濃度を分析した。 【結果および考察】小腸におけるアミノ酸代謝リズムの特性を明らかにするために,食餌のアミノ酸含量と食後の門脈血中アミノ酸濃度を比較した。大部分の必須アミノ酸において,門脈血中濃度は食餌蛋白質含量に応じて段階的に高値を示したが,門脈血中のアミノ酸組成は一定のパターンを維持していた。非必須アミノ酸のGlu, Asp, Arg, Glyは摂取量が増加しても門脈中には出現せず,Alaは食餌含量が少ないにも関わらず門脈血中濃度は摂食に伴って増加した。門脈血と肝静脈血中アミノ酸濃度の差から肝臓でのアミノ酸代謝量をみると,食後の肝臓における代謝量(取り込み量)は増加した。空腹時は多くのアミノ酸が肝臓で代謝されないが,Alaの取り込みとGlnの放出を担っていた。低蛋白質食群では,他の群に比較しどの時間帯でも肝臓におけるGlnの合成・放出量が最も多かった。以上のことから,小腸は特定のアミノ酸を代謝(異化)・合成することで,生体のアミノ酸組成を決定しており,肝臓はアミノ酸の量的な調整に関与していることが示唆された。これらの結果は,アミノ酸代謝特性を把握し,時間栄養学を基盤とした蛋白質摂取の意義を検討する際の,臓器間の代謝特性や日内リズムの基礎データとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットによる基礎研究を実施し,異なった蛋白質の量と質の食餌を摂取した際のアミノ酸代謝に関わる基礎的データを得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は実験動物での研究を中心に行った。今後は,食餌条件(量・質・時刻)のパターンを多様化させた幅広い実験を計画するとともに、これまでの研究成果をまとめる期間とする予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
動物実験においては,親ラットの食習慣の違いによる仔ラットへの影響を検討するために,ラットの交配を試みる。ラットの匹数を多くし,様々な摂食時刻や食餌条件を設定する予定である。ヒト試験も開始し,摂食時刻の違いによる各種代謝の変化をさらに詳しく検討する予定である。また,次年度はこれまでの研究成果のまとめ・報告年度とする。国際学会での発表を予定しており,研究費の多くを学会参加費および海外出張旅費に充てる予定である。
|