1日の食餌内容は同じでも,摂取する時刻によって生体内の栄養素代謝がどのように異なるかを調べるために,本年度は良質たんぱく質の適正な摂食時刻を時間栄養学の観点から検討した。成長期ラットの暗期に,摂食時間を朝食(活動期最初),昼食(活動期中盤),夕食(活動期終盤)の3回設定し,同じPFC比の実験食を摂取させた。実験食のたんぱく質は,アミノ酸スコアの高いカゼインを朝食・昼食・夕食のいずれか1回とし,残り2回はアミノ酸スコアの低い小麦たんぱく質とした。食餌たんぱく質含量やその他の栄養量はすべて同一にし,カゼイン食の摂食時刻のみ異なる食餌条件とした。体重増加や体脂肪は,カゼイン食の摂食時刻による差はなかった。血中の尿素や中性脂肪は,たんぱく質の種類や摂食時刻に関係なく,たんぱく質摂取量が同じであれば違いはなかった。赤筋(ヒラメ筋)のグリコーゲン量は,夕食にカゼイン食を摂取すると,著しく増大する日内リズムを呈した。逆に,鉄の門脈血中濃度は,朝食にカゼイン食を摂取すると増加した。 1日3回の食餌内容と量が同じでも,良質たんぱく質の摂食パターンが異なると生体内代謝に違いが認められた。このことは,各時間帯で食事の役割が異なっている可能性を示している。健康づくりと生活習慣病の予防・治療に応じて「いつ,何を,どのくらい食べるか」をさらに検討する必要性を見い出した。
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