研究課題/領域番号 |
23700921
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
久徳 康史 自治医科大学, 医学部, ポストドクター (70569706)
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キーワード | 食情報 / 味覚 / 記憶 / 主観的食生活の質 |
研究概要 |
先進国では、客観的指標において食生活の質と量が満たされている。にも関わらず、食生活に関する不満や不安が多く、主観的食生活(食QoL)が充足されていないという問題が生じている。これに対し、心理測定法と多変量解析を組み合わせたアプローチによって解決を試み、国民の食QoL向上に貢献することを目指している。 一昨年度の成果として、食の理想・あるべき・現実の食事特性を測定するためのFCQと食生活満足度質問紙を検証し、質問紙の信頼性が確認された。その質問紙を用い、健康的・体重管理がし易い・気分の盛り上がる・おいしい食事特定に関しては、理想と現実の乖離がほとんど無いことが分かった。反して、身近な・簡便な食事特性には、理想と現実の解離が小さいことが分かった。また、これらの乖離は、朝食・昼食と比較して、夕食で小さくなることが報告された(査読付き国際誌掲載、Kyutoku et al. 2012)。 これらの結果を基に、昨年度は、理想がどの様に実際の食生活に関係し、どの様に食QoLに反映されるかを朝食・昼食・夕食にてモデル化した。朝食においては、体重管理のし易い食事を望んでいる者は、実際に摂る傾向が強く、生活満足度が上がる。反して、簡便な食事を摂りたいと願い、摂ることで生活満足度が下がる。夕食においては、健康的な食事を望んでいる者は、実際に摂る傾向が強く、生活満足度が上がる。反して、簡便な食事を摂りたいと思い、摂ることで生活満足度が下がる。昼食に関しては、個人差が大きく特定のモデルは認められなかった。この様に、簡便さなどの後ろめたさを感じさせる食事特性に関しては、理想と現実の一致が、必ずしも食QoLの向上に結びつく訳ではないことが分かった(アメリカ心理学会発表確定、Kyutoku & Minami et al. 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度の研究結果を基に、当初の計画通り理想・現実の食事と食QoLの関係性の構造方程式モデルを検証した。 研究成果の発表に関しても、査読付き国際学会(アメリカ心理学会とInternational Council on Hotel and Restaurant and Institutional Managementにおいて、本年度のポスター発表が確定している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度構築された食QoLモデルの確証的研究を行う。併せて、一昨年度に検証した震災前後で理想と現実の解離性に変化が生じていないか追跡調査を行う。 これらの結果を国際的な学術誌(Food Quality and Preference等)や学会(アメリカ心理学会等)にて発表をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度構築された食QoLモデルの確証的調査、及び、一昨年度に検証した震災前後で理想と現実の解離性に変化が生じていないか追跡調査を行う。それぞれ、約300人の質問紙回答者が必要になると予測している。この調査に関わる諸費用が発生する。 成果を国際的な学術誌(Food Quality and Preference等)するための費用が必要となる。加えて、国際学会(アメリカ心理学会等)での発表が確定しているため、渡航費用と学会発表費用が必要となる。又、学術論文化にあたり、研究結果にに関する打ち合わせのため、国際出張費が生じる。 データ解析に際し、複数のコンピュータプログラムによる検討を行う必要があるため、データ解析用のモバイルワークステーションを購入する。また、統計ソフトのアップデート費用が生じる。データ解析に際し、所得データの保存メディアや解析に用いるコンピューター関連機材の購入を行う。 また、データ解釈のための参考文献を購入する。
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