研究課題/領域番号 |
23700922
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
瀬尾 誠 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10406473)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | いんげん豆 / 高脂肪食 / 脂肪肝 / 脂肪滴蓄積 / 脂質代謝 / 糖質代謝 |
研究概要 |
平成 23 年度は、研究代表者が以前検証していた in vitro 脂肪肝形成モデルに対して顕著な抑制効果を示したうずら豆抽出物に焦点を当て、高脂肪食負荷による脂質・糖質代謝異常を呈する動物モデルに対してうずら豆抽出物を飲水摂取させることにした。 6 週齢の C57BL/6J マウスにコントロール食または高脂肪食を自由摂取させた。また各食餌群に対し、蒸留水またはうずら豆抽出物 (0.1% または 1% (v/v)) を添加した蒸留水をそれぞれ自由飲水させた。コントロール食群では、蒸留水飲水群とうずら豆抽出物飲水群間での体重と血清中脂質濃度に関しては、顕著な差は認められなかった。また、高脂肪食群では、コントロール食群に比して、 試験開始2 週間目から体重が顕著に増加し、血中脂質濃度も顕著に増加した。一方、高脂肪食摂取かつ 1% うずら豆抽出物飲水群では、試験開始 10 週間目に有意な体重減少が認められた。そこで、 10 週間目をエンドポイントとして全血採血を行い、肝臓、精巣上体周囲脂肪などの組織を採取した。肝臓および脂肪組織の相対湿重量は、コントロール食群では、蒸留水飲水群とうずら豆抽出物飲水群間で差は認められなかった。また、高脂肪食群では、コントロール食群に比して、肝臓と脂肪組織の相対湿重量の増加と、肉眼所見で脂肪蓄積が観察された。一方、高脂肪食摂取かつ 1% うずら豆抽出物飲水群では、肝臓の相対湿重量がコントロール食群と同レベルまで低下し、肉眼所見で脂肪蓄積も軽減していた。また、脂肪組織の相対湿重量も減少傾向にあった。血清中脂質・糖質パラメーター濃度は、コントロール食群に比して高脂肪食群では、いずれも 4 週間目より顕著に増加した。一方、高脂肪食摂取かつ 1% うずら豆抽出物飲水群では、特にコレステロール濃度や空腹時血糖値の改善効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、当初 Wistar ラットに高脂肪食を負荷した際の脂質・糖質代謝異常発症に対するいんげん豆類抽出物摂取による改善効果を検証する予定であったが、試験準備段階でいんげん豆抽出物には配糖体が多く含有されているためか減圧濃縮すると粘性が高く混餌投与が困難であったこと、また Wistar ラットに高脂肪食を負荷して脂肪肝形成に至るまでに長期間を要することから、使用動物を C57BL/6J マウスに、またいんげん豆類抽出物の投与方法を飲水投与に変更した。当初の予定では、平成 23 年度中に、肝臓などの病理組織学的評価やマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析までを行う予定にしていたのであるが、前述したいんげん豆抽出物配合食餌の調製法の検討に若干時間を要したことから、実験実施開始が予定より遅れてしまったため、達成度としてはやや遅れていると評価した。現時点において、動物からの組織検体の採取は終了し、病理組織標本の作製に取りかかっており、またマイクロアレイの委託解析用サンプルも調製済みである。よって、平成 24 年度中に当初予定していた研究計画通り、うずら豆抽出物摂取による脂質・糖質代謝改善効果の分子作用機構の詳細な検討まで遂行できる状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成 23 年度の研究成果としては、高脂肪食摂取による脂質・糖質代謝異常発症に対し、うずら豆抽出物摂取することで、体重や肝臓・脂肪組織重量増加の抑制および血中脂質・糖質パラメーターの改善効果が認められた。そこで、平成 24 年度には、マウスより得た肝臓や脂肪組織を用いて、うずら豆抽出物摂取による脂質・糖質代謝改善効果の分子作用機構の解明を目指す。具体的には、まず肝臓より抽出した total RNA を用い、マイクロアレイの委託解析を行うことで、高脂肪摂取による脂質・糖質代謝異常に対し、うずら豆抽出物摂取により正常状態へシフトするように発現変動が認められる脂質・糖質代謝因子を網羅的に解析し、同時にリアルタイム PCR およびウェスタンブロットにより裏付けを確立する。また腸管に関しては、コレステロール吸収・排出に関与するトランスポーターの発現変動を中心に遺伝子およびタンパク質レベルで解析を行う。さらに脂肪組織に関しては、アディポサイトカイン分泌パターンにも変化が起こることが知られていることから、うずら豆抽出物摂取によるアディポサイトカイン濃度変化を血清および脂肪組織ホモジナイズ液について ELISA 法にて測定する。さらに、脂質・糖質代謝に関与するシグナル伝達経路や炎症反応やアディポサイトカイン産生の上流に位置する転写因子やシグナル伝達経活性化を解析することで、脂質・糖質代謝異常に対するうずら豆抽出物の改善効果を示す作用点を明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 23 年度中に計画していたマイクロアレイの委託解析まで行うことができなかったため、約 50 万円を平成 24 年度に繰り越した。平成 24 年度の研究費の使途としては、まず高額な費用としてマイクロアレイの委託解析費用を計上している。リアルタイム PCR 関連用品として反応試薬およびプライマーキット、ウェスタンブロット関連用品として抗体と化学発光試薬の購入に充てる予定である。また、アディポサイトカイン測定用 ELISA キットの購入に充てる予定にしている。また、平成 24 年度には、学会発表に係る旅費や論文投稿関連費用も計上したのであるが、研究の進捗具合によりこれらは研究用消耗品 (試薬) 購入費用に充てる予定にしている。
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