研究課題/領域番号 |
23700929
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
宮澤 大介 金城学院大学, 薬学部, 助教 (70434553)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / 神経栄養因子 / プロテインキナーゼ |
研究概要 |
神経栄養因子は神経の新生、分化、維持に必要であり、神経成長因子(nerve growth factor, NGF)、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)等が知られている。申請者によってマウスにおいては離乳後n-3系脂肪酸制限食を4週間給餌すると線条体のBDNF量が低下すること、p38 MAPキナーゼ活性が低下することが明らかになっている(Miyazawa D. et al. Life Sci., 2010)。このように食餌のn-3系列脂肪酸は脳神経系において重要な役割を担っていることが示唆されている。今回はさらに長期(8週)給餌をしたところ、大脳皮質、線条体、海馬ともに、n-3系脂肪酸制限食群のDHAは減少していた。BDNF量は大脳皮質、線条体において、n-3系脂肪酸制限食群で減少していたが、海馬では差はなかった。NGF量は両群間に差はなかった。PKC活性は大脳皮質、線条体においてn-3系脂肪酸制限食群で低下していた。p38 MAPK活性は大脳皮質、線条体、海馬において、n-3系脂肪酸制限食群で低下していた。PKA活性、p44/42 MAPK活性は両群間に差はなかった。これらを欧文原著論文として発表した(Miyazawa D. et al. Biomed. Res., 2011)。 n-3系脂肪酸制限食でPKC活性(大脳皮質、線条体)、p38 MAPK活性(大脳皮質、線条体、海馬)、BDNF含量が低下(大脳皮質、線条体)していることから、α-リノレン酸制限が脳機能に影響を与えるメカニズムにおいてPKCやp38 MAPKを介したシグナル伝達系やBDNFの関与が示唆された。また脳の領域において食餌脂肪酸組成の変化に対する応答性が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
8週給餌の結果から神経栄養因子賛成やプロテインキナーゼ活性の面から考察すると、脳の領域によって反応性が異なることが示唆された。これは4週給餌と8週給餌の結果を比較することで明らかにできた。しかし、進行中の8週給餌の解析を進めてn-3系脂肪酸制限食と脳機能の関係について結果を出すことが出来たが、胎児期、乳児期の脳の解析は予定通りには進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
胎児脳や胎盤の脂肪酸組成は母親の食餌の脂肪酸の影響を受けているかを調べるために、ガスクロマトグラフにより脂肪酸組成を測定する。食餌、胎盤、胎児脳の脂肪酸組成について相関を解析する。神経新生が親の食餌脂肪酸によって異なるかを調べる。脳の切片を用い、Ki-67(細胞増殖のマーカー)とnestin(神経幹細胞のマーカー)、DCX(神経芽細胞のマーカー)、MAP-2(神経細胞のマーカー)について免疫組織染色を行い、神経新生に食餌群間で差があるか解析する。神経栄養因子は神経の新生、分化、維持に必要である。神経成長因子(nerve growth factor, NGF)、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)、neurotrophin-3(NT-3)、neurotrophin-4/5(NT-4/5)等をELISA法により定量し、食餌群間に差があるかを解析する。プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼC(PKC)、MAPキナーゼ、カルモジュリンキナーゼ等のプロテインキナーゼは神経新生や分化にかかわることが知られている。これらのプロテインキナーゼのリン酸化を検出し、また活性を測定し、食餌脂肪酸の影響があるかを調べる。神経栄養因子量との相関についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
神経栄養因子を解析するための試薬として40万円使用を考えている。プロテインキナーゼ活性測定の試薬として25万円程度使用予定である。また、4月5月には研究補助者にこれまでのデータの解析を行ってもらう予定であり、補助者に30万円程度の謝金を予定している。
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