研究概要 |
神経成長因子(nerve growth factor, NGF)や脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)等の神経栄養因子は神経の新生、分化、維持に必要な因子として知られている。申請者らによって離乳後のマウスにn-3系脂肪酸制限食を4週間給餌すると海馬、大脳皮質のドコサヘキサエン酸(DHA)量が低下すること、線条体ではDHAの低下は見られなかったものののBDNF量が低下すること、p38 MAPキナーゼの活性が低下することが明らかとなっている。8週間の給餌では海馬、大脳皮質、線条体ともにDHA量が低下すること、また大脳皮質、線条体ではp38 MAPキナーゼやPKC活性の低下、BDNF量の低下がn-3系脂肪酸制限食で見られた。 これらを背景に、出産直後の親マウス(雌)にn-3系脂肪酸欠乏食を2週間与え、その母乳で育てられた仔マウスの脳を大脳皮質、線条体、海馬の領域に分けて摘出した。海馬、大脳皮質、線条体の脂肪酸組成を測定したところ、n-3系脂肪酸欠乏食群でドコサヘキサエン酸(22:6n-3, DHA)が減少していた。また、アラキドン酸(20:4n-6)は増加していた。またn-6/n-3比はn-3系脂肪酸欠乏食群で有意に高かった。この結果から授乳期の親の食餌脂肪酸が、母乳を介して仔の脳の脂肪酸組成に影響を与えることが明らかとなった。また、BDNF量の変化が領域の違いで見られた。p38 MAPK活性も影響を受けることが示唆された。
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