研究課題/領域番号 |
23700930
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
三田 有紀子 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (00410613)
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キーワード | クロム / 出納調査 / 食事摂取基準 / クロム摂取量 / クロム排泄量 / ICP-MS |
研究概要 |
本研究では、健常な若年女性を対象として日常の食事におけるCr摂取量と尿中及び糞便中Cr排泄量を測定し、日常的なCr出納を検討した。被験者は本研究に同意の得られた健常な若年女性8名(21.5 ± 0.5歳)とし、出納試験前に生活習慣・食習慣・運動習慣に関するアンケートと身体計測を行い、その後12日間を出納試験期間とした。その間の食事は通常と同じものとし、最初の5日間は目安法を用いた食事記録とその料理の写真を撮影し、その後7日間は目安法による食事調査と平行して食べた食事と同様のものを採取する陰膳法を行って食事をすべて回収した。また、出納試験期間中、尿は早朝尿から全ての量を採取し、糞便は1回の排便毎に全量を秤量後、一部採取した。試験期間終了後、再び身体計測を実施し、収集した食事、尿、糞便は均一化後、マイクロウェーブ分解装置を用いて分解してICP質量分析装置によりCr濃度を測定した。 その結果、被験者のCr摂取量は73.2±31.2μg/日、中央値は63.8μg/日、範囲は22.1~161.9μg/日となった。24時間尿中Cr排泄量は平均値2.63±2.79μg/日、中央値1.66μg/日、範囲0.24~16.3μg/日となった。糞便中Cr排泄量は4.52±4.03μg/日、中央値3.74μg/日、範囲0.42~16.3μg/日となり、尿および糞便中の総Cr排泄量は4.97±4.19μg/日、最大値17.4μg/日、最小値0.9μg/日、中央値4.4μg/日となった。この数値からCr出納を算出すると59.2±27.1μg/日となり、すべての被験者で正の出納が認められ、その範囲は17.3~114.1μg/日、中央値は52.3μg/日であった。また、この出納結果はCr摂取量との関連性が強く、摂取量の推定には尿中Cr排泄量が有効であることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究では、健常若年女性を対象としてクロム出納試験を行った。試験期間の献立は習慣的な摂取量を反映させるためいつも通りの食事とし、食事、尿、糞便の回収を行った。これらのサンプルの前処理はマイクロウェーブによる密閉式室式高圧分解で汚染を最小限に抑えることができ、クロム濃度測定もICP-MAのDRC モードを用いて高精度に測定できた。このことから、クロム摂取量、尿中クロム排泄量、糞便中クロム排泄量が明らかとなり、クロム出納が摂取量との間に強い相関があることが示唆された。また、早朝尿または24時間蓄尿を利用して尿中クロム排泄量からクロム摂取量の推定が可能であることも示された。したがって、平成24年度の研究では概ね予定通りの解析ができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23,24年度の研究結果から、日常的なクロム摂取量と尿中クロム排泄量との関連性、クロム出納との関連性が明らかとなった。以上を踏まえて、今年度は以下の研究を予定通り推進する予定である。 平成25年度は、ライフスタイルがクロム出納に及ぼす影響について検討・解析をする。被験者は平成23,24年度と同様に健常若年女性として、運動やストレスなどを介入してクロム出納試験を行う。平成24年度の研究において、クロム摂取量とクロム出納の間に強い相関が認められたため、今年度は食事を既知のものを用いて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の経費の用途は、これまでと同様で主に消耗品です。ICP-MSやマイクロウェーブの関連部品(ニッケルコーン、石英製トーチ、ネブライザー、高圧容器、シールなど)は消耗期限が約1年ほどでありますが、単価が高くかつ研究続行のために必要不可欠なものであるため計上しております。
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