• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

肥満・やせの表現型にあわせた脳卒中予防戦略の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23700934
研究機関近畿大学

研究代表者

田渕 正樹  近畿大学, 医学部, 講師 (20340771)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード健康と食生活 / 脳卒中 / 脂質代謝 / 肥満 / やせ
研究概要

本年度は、悪性脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(M-SHRSP)および正常血圧対照ラット(Wistar Kyotoラット: WKY)を用いて,体重,血圧,臓器重量,血清生化学値,糖質代謝などの基本的な形質の解析と、M-SHRSPに対する糖質代謝・脂質代謝への介入による脳卒中病態への影響についての検討を行い,以下の知見を得た.M-SHRSPは,WKYに比べ,体重,精巣上体周囲脂肪・皮下脂肪重量が低値であった.また,M-SHRSPの収縮期血圧は11週齢で250mmHg以上となり,生後10-13週齢で脳卒中を発症した.M-SHRSPは,WKYに比べ,インスリン濃度,血清総コレステロール濃度,中性脂肪濃度が低値であること,ならびに遊離脂肪酸濃度が高値であることを認めた.M-SHRSPにグルコール負荷試験を行ったところ,インスリン分泌機能低下による軽度の耐糖能異常が認められた.M-SHRSPに対し,インスリン持続投与を行ったところ,脳卒中予防効果は認められなかった.また,M-SHRSPに対するスルホニル尿素薬,ビグアナイド薬,チアゾリジン誘導体の経口投与にも脳卒中予防効果は認められなかった.M-SHRSPに対して,ある種の脂質異常症治療薬の経口投与を行ったところ,著明な脳卒中予防効果と生存日数の延長効果が認められた.また,M-SHRSPに高脂肪食を給餌したところ,脳卒中発症の遅延と生存日数の延長効果が認められた.以上の結果から,M-SHRSPは,インスリン分泌低下による軽度耐糖能異常や血清脂質の低下を基盤に持つ「やせ」型の脳卒中モデル動物であること,糖質代謝ではなく脂質代謝への介入により,その脳卒中病態を予防または改善できることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成23年度の計画では,研究実績の概要に記述したような「やせ」型脳卒中モデルM-SHRSPの解析と同様に,「肥満」型脳卒中モデルのSHRSP fattyについてもその基本的な形質を明らかにする予定であった. 「やせ」型脳卒中モデルM-SHRSPにおいて,体重,血圧,臓器重量,血清生化学値,糖質代謝などの基本的性質を明らかにできたこと,インスリンや経口抗糖尿病薬による糖質代謝への介入では,脳卒中発症予防にそれほど効果が得られないこと,脂質異常症治療薬の投与や高脂肪食給餌など,脂質代謝への介入試験により脳卒中予防効果と生存日数の延長効果を明らかにすることができた.これらの重要な知見は,新たな脳卒中発症予防法の開発につながるものであり,本研究全体を推進・達成する上で,非常に重要なデータが得られたと思われる.しかし,M-SHRSPの形質の解析や,糖質代謝,脂質代謝への介入試験にかなりの時間を費やす必要が生じたこと,SHRSP fattyの入手に時間を要してしまったため,当初の研究予定であったSHRSP fattyの形質の解析(体重,臓器重量,血糖値,血液生化学検査値,脳卒中発症日,脳血管病変の病理学的検索)がやや遅れてしまうこととなった.したがって,現在,SHRSP fattyの形質の解析を継続して進めている.

今後の研究の推進方策

平成24年度の研究計画では,「肥満」型脳卒中モデルラットSHRSP fattyの基本的性質を明らかにすることに重点を置く.具体的には,雄性のSHRSP fatty(n=10),および対照正常血圧ラット(Wistar Kyoko rats: WKY)(n=8-10)を用いて,5, 7, 9, 11, 13, 15週齢の体重,収縮期血圧,血糖値,血漿インスリン値,および血清生化学検査値(AST, ALT, クレアチニン,尿素窒素,総コレステロール,中性脂肪,遊離脂肪酸)のデータ収集を行う.また,SHRSP fattyの脳卒中発症日,生存日数を解析し,M-SHRSPとの差異について明らかにする.実験で摘出した脳組織から,脳組織標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色による脳血管病変(脳梗塞,脳出血,脳浮腫)の評価を行い,SHRSP fattyおよびM-SHRSPの脳卒中病変の種類,程度を比較・解析する.申請者は,予備検討により,M-SHRSPの脳卒中発症時に,脂肪由来生理活性物質(アディポサイトカイン)の一つであるアディポネクチンの発現および分泌の低下を見出している.肥満・やせによるアディポサイトカインの変動が脳卒中発症に関与する可能性が十分に考えられることから,M-SHRSPと同様にSHRSP fattyの血漿アディポネクチン濃度をELISA法により解析する.

次年度の研究費の使用計画

本年度は,研究の進行状況がやや遅れてしまったため,当初予定していた実験動物(SHRSP fatty)の購入費用などにおいて,未使用の研究費が生じた.SHRSP fattyの購入価格が1匹4万円と高価であることから,次年度以降に請求する研究費と併せて本年度未使用分を用いて,実験動物および動物用飼料の購入に60万円,各種キット,抗体等の試薬の購入に40万円,プラスティック器具等の購入に20万円,その他に5万円を計上し,次年度の研究を実施したい.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Differential changes of aorta and carotid vasodilation in type 2 diabetic GK and OLETF rats ? Paradoxical roles of hyperglycemia and insulin.2012

    • 著者名/発表者名
      Zhong MF, et al.
    • 雑誌名

      Exp. Diabetes Res.

      巻: 2012 ページ: 429020

    • DOI

      10.1155/2012/429020

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Delay of stroke onset by milk proteins in stroke-prone spontaneously hypertensive rats.2012

    • 著者名/発表者名
      Chiba T, et al.
    • 雑誌名

      Stroke

      巻: 43 ページ: 470-477

    • DOI

      10.1161/STROKEAHA.111.618496

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Zinc deficiency enhances sensitivity to carbon tetrachloride-induced hepatotoxicity in rats.2011

    • 著者名/発表者名
      Kojima-Yuasa A, et al.
    • 雑誌名

      J. Trace. Elem. Med. Biol.

      巻: 25 ページ: 103-108

    • DOI

      10.1016/j.jtemb.2011.02.001

    • 査読あり
  • [学会発表] ラット脳卒中発症に対するアディポネクチンの治療効果に関する検討2012

    • 著者名/発表者名
      田渕正樹,他
    • 学会等名
      第84回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      京都市(京都国際会館)
    • 年月日
      2012年3月15日

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi