研究概要 |
肥満は高血圧や糖尿病の生活習慣をはじめとして、多くの疾患のリスクファクターとなる。肥満により肥大した脂肪細胞では種々の刺激により炎症や酸化ストレスを誘発し、動脈硬化などの炎症性疾患の引き金となりうる。H25年度は「脂質酸化代謝物」特に、リノール酸の酸化物であるヒドロキシリノール酸(HODE)に焦点を絞り、細胞応答を解析した。 糖尿病による急激な血糖値の上昇は、酸化ストレスを誘導することが知られているが、なかでも一重項酸素の発生と疾患の関与が示唆されている。そこで、一重項酸素特異的に生成するリノール酸酸化物の細胞応答について検討した。HODEは酸化機構により6種類の異性体が存在する。中でも一重項酸素による非ラジカル的酸化では9-EZ, 10-EZ, 12-ZE, 13-ZE-HODEの4種類が生成する。これらのHODE異性体による細胞応答について検討を行った。細胞保護作用は、HODE添加後に過酸化水素で酸化ストレスを負荷し、その後の生細胞数を計測した。細胞応答は、DNAアレイ解析やRT-PCR法やウエスタンブロット法により抗酸化物質の解析を行った。過酸化水素により誘導される細胞死に対して、HODEの前処理により細胞保護効果が認められ、その効果は異性体種によって異なった。また、細胞保護作用が認められたHODE異性体では、NF-E2 related factor 2 (Nrf2)の核内移行を介したGSH含量の増加とHO-1の発現上昇が認められ、抗酸化機能の活性化が明らかとなった。以上の結果からHODEは異性体種によって異なる細胞応答を誘導し、その細胞保護作用には抗酸化能の上昇が寄与していると示唆された。現在この研究成果を論文投稿中である。
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