昨年までの結果より、メタボリックシンドロームモデルラットSHRSP・ZFの腎臓において、高血圧のみを発症する非肥満同腹子(Lean)に比較して12週齢においては腎障害が更新しており、その発症・進展にマイクロRNAの関与が示唆された。本年度はメタボリックシンドロームの病態基盤となる脂肪組織に重点をおいて解析をおこなった。 近年、脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポカイン)が、肥満における炎症反応に大きく関与している可能性が示唆されている。よって、SHRSP・ZFラットの脂肪組織におけるアディポカイン遺伝子発現を調べた。脂肪組織は、副睾丸周囲・腸間膜周囲・腎周囲の各部位から採取し、TNFα、MCP-1、アンギオテンシノーゲン、アディポネクチン、レジスチンmRNA発現をLeanと比較した。 MCP-1はSHRSP.ZFで有意に亢進が認められ、血中MCP-1濃度も同様にSHRSP.ZFで高値を示し、とくに腎周囲脂肪においてMCP-1の発現が亢進し、腎周囲脂肪を介した腎組織への炎症反応が考えられる。そこで、脂肪組織におけるマイクロRNA発現について、マイクロアレイ解析を行い、SHRSP.ZFとLeanを比較した。脂肪において発現に差異が認められたのはわずか4種類であり、機能や関連遺伝子が明らかになっているものは少なかった。脂肪組織における炎症反応はマイクロRNAよりも他の因子の影響が大きいことが示唆された。
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