これまでの解析によってguanine nucleotide binding protein beta polypeptide 3(GNB3)の遺伝子多型は、Gタンパクを介したシグナル伝達が食塩摂取依存的に交感神経を刺激して、心拍数を制御する事を示唆した。今年度はさらにGM33と複合体を形成しシグナル伝達に関わるguanine nucleotide-binding protein alpha-stimulating activity polypeptide 1(GNAS1)を標的にWHO-CARDIAC研究で収集した疫学データと保存血液試料を用い解析を進めた。日本人の集団においてはGNAS1遺伝子多型がリスク型102名、非リスク型114名であった。しかしながらGNAS1の遺伝子多型は日本人において収縮期および拡張期血圧に影響しないことを明らかにした。さらにGM33の解析で明らかにした食塩排泄量を基準とした食塩摂取量依存的な遺伝子多型による心拍数の差異は、GNAS1の非リスク型とリスク型において見られず、またGFB3のリスクに対する影響も見られなかった。したがってGNB3の食塩摂取依存的な心拍数の変化はGNAS1の遺伝子多型と無関係であり、Gタンパクを介したシグナル伝達に必ずしも依存していないことを示唆した。このように食塩摂取がGNB3を介して交感神経を活性化し心拍数を制御する可能性を示唆し、食塩感受性高血圧に新たな知見を加えた。
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