研究課題
昨年度我々は、愛媛県特産柑橘の一つである「河内晩柑」の果皮に特徴的に多く含まれ、中枢神経系への作用が明らかにされていなかった、クマリンの一種であるオーラプテン(AUR)と、ポリメトキシフラボンの一種であるヘプタメトキシフラボン(HMF)の、脳虚血障害に対する効果について研究を行ってきた。今年度は、麻酔下でC57BL/6マウスの頸動脈流を12分間一時的に止め、再還流することで作製した全脳虚血モデルに対する、AURの予防効果を検討した。AURを入れたAlzet浸透圧ポンプを背中皮下に埋め込み、除放的な連続投与を行った。投与量は25mg/kg/dayとし、虚血手術5日前にAURサンプルの投与を開始、5日後に虚血手術、その3日後にY-mazeテスト、解剖を行い、引き続き脳組織の解析を行った。AUR投与で、脳虚血により低下した短期記憶障害を改善する傾向が見られた。海馬においてシクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)、NFkB p65ならびにミクログリアの活性化抑制による抗炎症作用、また虚血によって引き起こされる神経細胞死抑制作用も観察された。次に、虚血モデルで脳由来神経栄養因子の産生増強作用を示したHMFの、脳における抗炎症作用について検討を行った。1週間のHMF(100mg/kg/day)皮下投与後、リポポリサッカライド(LPS)を海馬に注入して炎症を誘発した。LPS投与2日後、LPS投与によって減少した体重は、HMF投与によって有意に抑制されていた。海馬におけるCOX-2 mRNA、COX-2タンパク質、ミクログリアの活性化も有意に抑制されていた。これらの結果を総合すると、AURとHMFを高含有する河内晩柑の果皮が、脳虚血障害または脳内でおこる炎症に対し抗炎症・栄養因子産生促進作用を含めた様々な生理活性を持つ可能性が示唆された。
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