研究課題/領域番号 |
23700942
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
西山 敦子 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (90461475)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / アルツハイマー病 / ラット / 自発運動量 / 学習記憶 / 不安 |
研究概要 |
健常ラットと糖尿病ラットに一時的に健忘症を引き起こす臭化水素酸スコポラミン(Sco)を投与し、運動、記憶、不安状態について、糖尿病とアルツハイマー病(AD)との関連を検討した。自発運動量では、コントロール群(C)とSco投与ラット(AD)間、糖尿病ラット(DM)とSco投与糖尿病ラット(AD+DM)間で差はなく、CとDM間では、DMの運動量は有意に減少した。ADとAD+DMでは、AD+DMの運動量は減少傾向であった。学習記憶は、電気刺激の回避回数がCと比較してADでやや減少し、DMとAD+DM間ではAD+DMで有意に減少した。無反応の回数はCと比較してADは減少し、逆にAD+DMはDMの約2倍も増加した。高架式十字迷路は、Cと比較した場合、AD及びAD+DMのopen arm滞在時間は有意に減少した。CとDM間、ADとAD+DM間に差はなかった。 これらの結果から、アルツハイマーの発症が自発運動に及ぼす影響は少なく、自発運動量の減少については糖尿病が関係した可能性が強いことが示唆された。学習記憶は、AD+DMの無反応の回数が増加したことから、糖尿病がよりアルツハイマーを悪化させた可能性が考えられた。高架式十字迷路では、ADでopen arm滞在時間が減少したため、アルツハイマー症状の1つである不安状態だと思われるが、糖尿病が不安を増幅させることはなかった。しかしながら、運動がADを予防するという報告もあることから、DMの発症による自発運動量の低下は、運動不足のDM患者にとって、AD発症の一因となる可能性がある。記憶学習実験では、無反応の回避率がAD+DMラットで最も高いことから、DMがよりADを重症化させた可能性が示唆された。 以上より、DMはADの症状を増幅させる可能性が示唆され、ADかつDM患者にとっては血糖値をコントロールするのが重要であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず実験で使用するモデルラットを作成した。実験で使用するラットは、健常ラット(C)、糖尿病ラット(DM)、アルツハイマー発症ラット(AD)、アルツハイマー発症糖尿病ラット(AD+DM)の4種類である。なお、DMはストレプトゾトシン(STZ;60mg/kg)を腹腔内に投与し、血糖値を確認後、高血糖を示したラットを用いた。ADは、一時的に健忘症を引き起こすスコポラミン(Sco;1.5mg/kg)を10日間連続して腹腔に投与し作成した。各ラットの学習記憶実験、高架式十字迷路実験、自発運動量測定実験を行い、不安や自発運動量、記憶に関して、DMがADに与える影響について観察したところ、DMはADを悪化させる可能性があることが示唆された。しかしながら自発運動量はADに関係なくDMを発症することにより減少することがわかった。また現在、上記の行動解析と併せて、それらのモデルラットの神経生理学的実験も行っているところであり、マイクロダイアリシス(微小透析)法を用いてラットの脳海馬セロトニン(5-HT)放出量および一酸化窒素(NOx)量の比較を行っている。これまでに、糖尿病およびアルツハイマー病モデルラットの作成、そのモデルラットを使用した行動解析(自発運動量、高架式十字迷路、学習記憶)を行い、現在、マイクロダイアリシス法による5-HT量、NOx量の測定を進めている段階である。今後はさらに例数を増やすことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロダイアリシス法による脳海馬セロトニン(5-HT)放出量、および一酸化窒素(NOx)量を、健常ラット(C)、糖尿病ラット(DM)、アルツハイマー発症ラット(AD)、アルツハイマー発症糖尿病ラット(AD+DM)で引き続き比較検討を行っていく。今後は例数を増やすこと、さらに5-HTのアゴニスト・アンタゴニストを用いて上記ラットの5-HT放出量、およびNOx量の違いを比較検討する。また、行動学実験については、マウスを用い、マウスの摂食量、摂水量、行動量を測定する予定である。マウスは、健常マウス(C57BL/6J)と糖尿病マウス(KK/Ta)を使用するが、ADモデルにはラットと同様にスコポラミン(Sco)を投与し、4種類のモデルマウスを作成して実験を行う予定である。今回、各ラットの学習記憶実験、高架式十字迷路実験、自発運動量測定実験を行い、不安や自発運動量、記憶に関して、DMがADに与える影響について観察したところ、DMはADを悪化させる可能性があることが示唆されたため、今後は、AD+DMラットにインスリンを投与した場合についても検討を行っていきたい。DMがADに与える影響について、さらに検討を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
機器備品は、マイクロダイアリシスシステムで使用しているパワークロムシステム(ソフトウェア&ハードウェア一体ユニット)を購入予定である。パワークロムシステムは、クロマトグラムの表示、記録、解析等を行う重要な機器である。約15年近く使用しており、バージョンも古く、ハードウェアとパソコンの接触が悪くなってきてため、実験に支障をきたす恐れがあり、購入を予定している。また消耗品は、脳定位手術に関する消耗品としてガイドカニューレ、キャップナット、ダミーカニューレ、メスの替え刃等を、マイクロダイアリシスにおける消耗品としてカラム、透析プローブ、フリームービングチューブ等を、また、その他の消耗品として、実験動物、試薬、ゴム手袋、薬包紙、チップ等を購入予定である。特に、マイクロダイアリシスの消耗品は1つ1つが繊細で高価なため、消耗品の中でもその占める割合がやや大きくなると思われる。その他、2013年3月27日(水)~29日(金)に第90回日本生理学会大会が、タワーホール船掘(東京)で開催される。研究報告の機会として、学会への参加を予定している。その旅費として使用予定である。
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