研究概要 |
水溶性ビタミンの定量法として、広く微生物学的定量法 (MBA) が採用されているが、結果を得るために長時間を要すること、夾雑物の影響を受けやすいことや、操作の煩雑さにより分析精度に問題のあることが知られている。そこで、本研究では MBA を分析法とする水溶性ビタミンのうち、含有量の低いビタミン B12 (B12) に着目し、市販の食品を対象とした、機器分析法の開発とその妥当性について検討を行うものである。本法により B12 定量分析の効率化と測定時間の短縮を目的とする。 本年度は、以下の 3 項目に関して検討を行った。【1.安定同位体標識化シアノコバラミン 13C15N-cbl 及び 13CN-cbl の合成】1 mg/mL OH-cbl 水溶液に、0.05 % K13C15N または K13CN を等量添加し、遮光条件下で 90 分反応させ、収率 100 % で安定同位体標識化シアノコバラミンを得た。【2.Ribose-5'-OH の誘導体合成】CN-cbl を DMSO 溶媒に溶解させ、1,1’-carbonyldi-(1,2,4-triazole) (CDT) を加えた後、30 度, 30 分撹拌することにより、Ribose-5'-OH に CDT が付加した誘導体を得ることができた。誘導体は、さらにアルキルアミンなどと反応させ、種々のエステル体を得た。【3.抽出方法に関する検討】市販のサプリメントを対象とした抽出方法の検討では、抽出回数 1 回に比べて 2 回の方が、収率が高くなることが明らかとなった。また、認証標準物質を用いた検討でも、同様の結果が得られた。 これまでビタミン B12 は、安定同位体や誘導体がなく、LC/MS での精確な定量化が困難とされていたが、検討 1. 及び 2. から、これらを応用した定量法の構築に関する可能性が示唆された。
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