野菜・果物を中心とした食品に含まれる抗酸化物質は健康の維持・増進に大きく寄与することが期待されている。食品には多種多様な抗酸化物質が含まれているが、「総量としてどの程度の抗酸化物質を摂取すれば健康を維持・増進できるか」について、現時点で確たる科学的根拠は得られていない。これまで、研究代表者はOxygen Radical Absorption Capacity(ORAC)法を用い、代表的な野菜・果物の抗酸化能を測定し、それらからの抗酸化物質一日摂取総量の検討を行ってきた。本研究は、それをさらに発展させ、野菜・果物以外の食品を含む食事全体からの抗酸化物質摂取総量の推算を可能とする「食品の抗酸化能データベース」を構築することを目的として実施した。 4年計画の4年目である当該年度は、今まで抗酸化活性が比較的小さいと考えられており、網羅的な抗酸化能の評価が不十分であった動物性食品(魚介類、肉類、卵類、乳類)について、重点的に検討した。動物性食品のH-ORAC値(親水性抗酸化物質の総量を反映)は、最大値を比較すると野菜・果物に及ばないものの、平均的な野菜・果物の数値と同程度のものが多数存在した。一方、動物性食品のL-ORAC値(親油性抗酸化物質の総量を反映)は、野菜・果物の最大値を超える食品が存在した。これらのことから、現在ほとんど注目されていない動物性食品が、抗酸化物質摂取総量へ及ぼす寄与は少なくない可能性が考えられた。 動物性食品の抗酸化能がどのような物質に由来するかについては充分な検討が行えなかったが、20種類の必須アミノ酸についてORAC値を測定した結果、5種類のアミノ酸(Cys、Met、Tyr、Trp、His)に抗酸化活性が認められており、これらを含むたんぱく質・ペプチドの寄与が示唆された。
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