2012年度は、初等光学(主に幾何光学)の分野に関する米国PER(物理教育研究)の誤概念調査と教材開発の状況、及び我が国の理科教科書、参考書における取扱い上の問題点を明らかにし、これを踏まえて、アクティブ・ラーニングの手法に基づく指導法と教材とを開発し、共通教育(一般教養)の授業を開講し、実践を行った。この中で扱われる問題にはPER教材を踏まえてさらに発展させたもの(光の直進性に関する光源とスクリーン上の明点の運動の対応など)や、独自に新しく開発したもの(レンズにおける光線図の段階的な作図練習など)が含まれている。 開発したグループ学習ワークシート教材においては、事前事後テストの結果や学生の記述からその有効性が確認された。この評価もまた米国PER教材の一つであるRealTime PhysicsやInteractive Lecture Demonstrationsに伴い開発された評価テストであるLOCE(Light and Optics Concept Evaluation)から用いており、国際的な標準となりうる問題の候補である(ただし妥当性の詳細な吟味は今後の課題である)。これらの内容について、2013年3月の日本物理学会で発表を行った。 事前事後テストによる教育効果の評価指標であるgainの値は0.4と良好であるが、今回の実践研究において受講学生が記入したワークシートをほぼ全てコピーしており、そこでの記述を詳細に検討すると、概念形成上や協働学習上の困難がいくつか見出される。定量的な教育評価のみでは、これらの点は見落とされてしまうが、1年間の研究期間延長により、この点を踏まえた改善を開発教材に施す。
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