本研究は,近年増えているICTを取り入れた学習環境・空間で授業を行う教員を対象に,教員の授業方法やICTを取り入れた学習環境・空間における授業への意識等を調査するものである.本年度は,(1)データの分析,(2)関連研究の資料収集,(3)研究成果の報告 を主に行った。 (1)については,昨年度までに収集したデータの分析を行った.対象校は,首都圏の中学校である.対象校では,可動式の什器と複数プロジェクタとスクリーン,ホワイトボードなどを備えるICT支援型スタジオ教室を設置している.加えて,教員と生徒は,1人1台ずつのタブレット端末を使うことができる.本研究では,この教室における中学1年生の「総合的な学習の時間」を担当する教員3名へのインタビュー調査(2012年7月末,2013年3月の2回)と授業ビデオ記録,観察記録のデータを用いて分析を行った.教員の授業準備・設計,授業中の指導といった授業運営を分析の観点として設け,その実際と変化を明らかにした.その結果,1年間の実践を通じてICT活用や教材利用,授業中の指導,授業運営体制に変化が生じたこと,授業準備段階において抱えた困難とその解決方法の試行錯誤が明らかとなった.本研究は,一事例のみを対象としたことから必ずしも一般化することは難しいものの,今後さらに増えるであろうICT支援型教室とりわけ,1人1台端末環境における授業運営について有益な知見を得ることができた.本研究での知見は,ICT支援型学習環境・空間における授業運営のための研修や体制,支援方法に役立てることができると考える. (2)については,学会に参加するなどして,関連研究の資料収集を行った. (3)については,(1)での分析結果を第29回日本教育工学会全国大会(2013年9月 於 秋田大学)において発表した.また,本研究の成果を学術論文にまとめて投稿し,現在査読中である.
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